金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年12月06日

抗リン脂質抗体症候群(APS)の検査:臨床検査からみた血栓症(8)

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臨床検査からみた血栓症(インデックスページ)

抗リン脂質抗体症候群(APS)

 

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抗リン脂質抗体症候群の改定分類基準 (2006年版)

以下の臨床所見の1項目以上が存在し、かつ検査所見の1項目以上が12週間以上の間隔をあけて
2回以上検出された場合を抗リン脂質抗体症候群(APS)と分類する。

 

臨床所見

1. 血栓症:
画像検査や病理検査で確認できる1つ以上の動静脈血栓症(血管炎は除く)

2. 妊娠合併症
(a) 妊娠10週以降の胎児奇形のない1回以上の子宮内胎児死亡
(b) 妊娠高血圧症、子癇もしくは胎盤機能不全などによる1回以上の妊娠34週未満の早産
(c) 妊娠10週未満の3回以上連続する原因不明習慣性流産

 

検査所見   
1.ループスアンチコアグラント(LA)陽性(LAの測定は国際血栓止血学会のガイドラインに従う)
2.IgGまたはIgM型抗カルジオリピン抗体陽性:中等度以上の力価または健常人の99パーセンタイル以上
3.IgGまたはIgM型抗β2−グリコプロテインI抗体陽性:健常人の99パーセンタイル以上
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【血栓性素因のスクリーニング検査】ー後天性血栓性素因ー

抗リン脂質抗体症候群(APS)の検査

2006年に発表されましたSapporo Criteriaを改定した抗リン脂質抗体症候群(APS)分類基準によりますと(上記の表)、臨床症状1項目以上と、ループスアンチコアグラント(LA)、抗カルジオリピン抗体(aCL)、抗β2-グリコプロテインI (抗β2-GPI)抗体のうち1項目以上が12週間以上の間隔をあけて2回以上検出された場合をAPSと診断します。

抗リン脂質抗体と血栓症との関連性は、抗体によって様々ですが、血栓症と最も関連性の強い抗体はLAと考えられています。

抗β2-GPI抗体も診断的価値が高いですが、IgG型、IgM型とも保険適用外検査です。一方、aCLは診断基準に載っていますがそれほど関連性を認めないとの報告もあります。

Galli M, et al: Lupus anticoagulants are stronger risk factors for thrombosis than anticardiolipin antibodies in the antiphospholipid syndrome: a systematic review of the literature. Blood 101: 1827-1832, 2003.

 

ループスアンチコアグラント(LA)測定の際の注意点

LA検査は凝固時間法によって測定する定性的検査です。検体採血・処理方法、正常血漿の準備、用いる測定試薬によって測定結果は大きな影響を受けます。

被検者がヘパリン類使用中の場合は、LAが偽陽性を示すことがあります。

一方、血栓症急性期や妊娠中、重症炎症性疾患、高用量ステロイド使用中などの場合は、活性型凝固因子の増加のため、LAが偽陰性となりやすいことが知られています。

長時間駆血した検体や溶血検体も試験管内凝固が生じ、LAが偽陰性となりやすいです。

また、採血後の検体は血小板からリン脂質が溶出しLAが中和されるのを防ぐため、フィルターを通して血小板を除去する必要があります。

対照として用いる正常血漿も、フィルター処理を行い、なおかつ凝固活性化されていない検体を準備する必要がある点も明記したいと思います。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:34| 血栓性疾患 | コメント(0)

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