金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年01月05日

第VIII因子インヒビター(後天性血友病)を発症した骨髄腫症例

第VIII因子インヒビターには、大きく以下の2つのタイプがあります。

1)先天性血友病Aに対して、第VIII因子製剤を投与した場合に発症する場合(同種抗体)

2)後天性に(悪性腫瘍、膠原病、高齢などを背景に)発症する場合<後天性血友病>(自己抗体)

どちらも最近、何かと話題ですが、今回は多発性骨髄腫を背景とした後天性血友病の最近の症例報告を紹介させていただきます。

「第VIII因子インヒビターを発症した多発性骨髄腫の1例」

著者名:Sari I, et al.
雑誌名:Int J Hematol 90: 166-169, 2009.

<論文の要旨>

著者らは、多発性骨髄腫に第VIII因子インヒビターを発症した43歳女性の報告を行っていあす(世界で2例目の報告です)。

本症例における入院の契機は貧血と赤沈亢進でした。

入院の2ヶ月前に、卵巣のう腫の手術を行っていますが、術後に大出血をきたしました。血液検査ではAPTT延長、混合試験でのinhibitor pattern、第VIII因子活性の低下所見が見られ、第VIII因子インヒビターの診断がなされました。

また、骨髄において骨髄腫細胞40%の浸潤が確認され、免疫泳動所見よりIgG-κ型の多発性骨髄腫と診断されました。

VAD療法を3クール行ったあとに、自己幹細胞移植を行い、最終的には第VIII因子インヒビターは検出されなくなりました。

以上、高度な出血症状をきたす症例に遭遇した場合には、第VIII因子インヒビターも念頭におくべきと考えられました。また、第VIII因子インヒビター症例の基礎疾患として多発性骨髄腫もありうるものと考えられました。

 

 

第VIII因子インヒビターは、最近になり啓蒙が 進んでいるように感じています。

管理人の個人的な経験でも、近年、多くの第VIII因子インヒビター(特に先天性血友病)症例のコンサルトを受けているように思います。

これは、発症者数が増加したというよりも、啓蒙が進んだ結果として適確に診断されるケースが増えてきたことが原因ではないかと思っているところです。


【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:21| 出血性疾患 | コメント(0)

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