ITPに対するピロリ菌除菌療法と鉄欠乏性貧血の報告
治療が必要な特発性血小板減少性紫斑病(ITP)治療の第一選択薬と言えば、一昔前はステロイド治療でした。
今もこの治療は、最も重要な位置を占める治療の一つであることは間違いないですが、しかし、ステロイド治療と同等以上に、ピロリ菌の除菌療法が重要な位置を占めているのではないかと思います。
除菌療法は、ステロイド治療とは異なり、ほとんど副作用がありません。しかも、ピロリ菌陽性の人で除菌療法に成功しますと、半数例で血小板の回復が期待できます。
また、この除菌療法は、鉄欠乏性貧血に対しても有効な場合があることが報告されています。
最近、ITPに対する除菌療法を考える上で、示唆に富む報告がありましたので、紹介させていただきたいと思います。
「特発性血小板減少性紫斑病の経過中にHelicobacter pylori除菌療法により軽快した鉄欠乏性貧血」
著者名:守田玲菜、ほか。
雑誌名:臨床血液 50: 1655-1657, 2009.
<論文の要旨>
H.pylori(HP)は、胃・十二指腸潰瘍以外に、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や鉄欠乏性貧血(IDA)との関連性が指摘されています。
著者らは、ITP経過中にFe剤抵抗性のIDAを合併し、HP除菌療法がITPに対しては効果がなかったものの、IDAには有効であった症例を報告しています。
症例は53歳女性で、ITPに対してプレドニゾロンの治療が行われ、IDAに対して鉄剤の内服投与が行われましたが、いずれも効果はみられませんでした。呼気テストによりHPの感染が確認されたために、2001年に除菌療法が行われました。
その結果、ITPに対しては無効でしたが、IDAに対しては有効でした。
HP感染との関連性は、ITPとIDAで全く異なるものと推測されていますが、今回のような症例を解析することにより、HP感染に伴うITPやIDA発症の機序を解明していくことが可能ではないかと考えられあます。
ピロリ菌は、なかなか奥が深いです。
なお、管理人はITPの患者さんで、ピロリ菌陽性であった場合には、治療選択肢が増えるという観点から、むしろ歓迎すべきことではないかと思うことが多々あります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:40| 出血性疾患 | コメント(0)