金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年01月12日

致命的な出血に対するノボセブンの報告

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa、商品名:ノボセブン)に関する論文は多数ありますが、大きく以下の論文に分類されると思います。

1)rFVIIaの作用機序に関連した論文
2)rFVIIaの臨床効果を報告する論文

上記のうち、2)の論文ですが、本来の適応である先天性血友病でのインヒビターや後天性血友病に関する論文よりも、適応外使用の論文の方が多いと思います。

その位、適応外使用で著効することが注目されているということではないかと思います。

金沢大学第三内科ブログ(血液・呼吸器内科のお役立ち情報)で、既に何回か紹介させていただきましたが、今回も、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤に関する適応外使用の論文を紹介させていただきます。


「致命的な出血に対する遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の有効性」


著者名:Sartori MT, et al.
雑誌名:Clin Appl Thromb Hemost 15: 628-635, 2009.

<論文の要旨>

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)は、難治性の致命的な出血に対して適応外使用されることが多いのが現状です。

著者らは、外傷、手術、臓器移植、肝硬変、子宮破裂に起因する出血をきたし、血液製剤や観血的処置による標準治療が無効であった31症例に対してrFVIIaを投与しています。評価項目は血液・凝血学的所見、酸・塩基バランス、出血量、赤血球輸血量、血漿・血小板輸血量、合併症、生存率です。

rFVIIa(平均使用量132.2±56.3μg/kg)は、28/31症例(90.3%)において止血効果を発揮し、出血量も12.4±10.2→2.7±2.2 L(P<0.0001)へと減少させました。

各種血液製剤の使用量も有意に低下しました。

また、凝血学的検査所見、ヘマトクリット、PHも有意に改善しました。4症例においてはrFVIIaによると思われる副作用が見られました。1日後および30日後における生存率は、それぞれ48.4%、29.1%でした。

以上、rFVIIaの適応外使用は、致命的出血のみられる臨床現場において有用な治療薬になっているものと考えられました。



rFVIIaの副作用も皆無ではありませんし、実際、血栓症の合併症をきたし致命症となることもまれにはありえます。無分別な適応外使用は行うべきではありませんが、一方で、本薬により九死に一生を得ることもある点は、頭に留めておきたいと思います。

 

 

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:39| 出血性疾患