金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年01月13日

血餅退縮能とは(1):血小板無力症のスクリーニング検査

血餅退縮能は、現在あまり行われなくなってきている検査かもしれませんが、血小板、血栓を理解するという観点からも重要な検査ではないかと思います。

関連記事:血液凝固検査入門(図解シリーズ)

 リンク:血餅退縮能(インデックス)


血餅退縮能とは

血餅退縮能(clot retraction test)は、血小板無力症のスクリーニング検査としての意義が最も大きいですが、血小板凝集能を施行可能な医療機関であれば、あまり行われていないのが実状ではないかと思われます。

しかし、止血、血液凝固、血小板機能などの本質を知る上で、是非知っておきたい検査と言えます。

血液凝固反応が進行して凝血塊(血餅)が形成される過程で、血小板が血餅に取り込まれます。この形成された血餅は次第に収縮(退縮)していく現象が知られています。そのため、血餅中から血清が分離されてきます。

これは、血餅内で血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIa(血小板インテグリンαIIb/β3)とフィブリンが結合した状態で、血小板内の収縮蛋白の作用により血小板が収縮した結果として、フィブリンが引っ張られて血餅が収縮するためと考えられています。

なお、GPIIb/IIIaは膜を貫通しているインテグリンファミリーの一つで、裏打ち蛋白のアクトミオシン(骨格蛋白)と結合しています。GPIIb/IIIaにフィブリンが結合しますと、裏打ち蛋白の収縮力はGPIIb/IIIaを介してフィブリンに伝わり、フィブリン塊が収縮し、血餅退縮を生じます。血餅退縮は、フィブリン塊を補強する役割を演じているものと考えられています。

血小板無力症では、GPIIb/IIIaが欠損しているために、血餅退縮能は低下します。

また、血小板無力症以外では、血小板数やフィブリノゲンが低下した病態でも血餅退縮能は低下します。


(続く)

 

血餅退縮能とは(2):検査方法

 

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:48| 凝固検査