金沢大学血液内科 血栓止血研究室紹介(6)大動脈瘤とアネキシンII
金沢大学血液内科 血栓止血研究室紹介(5)先天性凝固異常症 から続く
【血栓止血グループ(6)】
また最近小児科との共同研究として、ヘム蛋白の分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ−1(HO-1)の抗血栓作用についての研究を、保健学科助教関谷および大学院生丸山、油野らが開始いたしました。まだ発展途上の研究ですが、HO-1は治療戦略の一つとして利用できる魅力的な酵素の可能があると考えております。
一方、保健学科社会人大学院生である検査部生理機能検査室の寺上は、能登沖地震直後に現地に入り、心肺・総合外科の大竹先生や木村先生と共に避難住民を対象とした下肢静脈エコー検査(リンク:深部静脈血栓症)や血栓のマーカーであるFDPやDダイマーを測定した結果を論文としてまとめました。地震発症直後のDVTの発症状況を提供する、貴重な資料になると考えております(臨床検査医学会雑誌)。
また新たな研究の方向性として、林らは大動脈瘤に合併する播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態に迫るべく大動脈瘤のラット動物モデルを作成し、線溶作用を有するアネキシンIIが高発現していることを免疫組織学的染色およびreal-time RT-PCR法を用いて明らかにしました。
Expression of annexin II in experimental abdominal aortic aneurysms.
Int J Hematol. 2009 Oct;90(3):336-42.
また臨床的には、大動脈瘤手術症例の切除標本と血中分子マーカーを用いた検討を、心肺・総合外科の血管グループと共同研究で行っております。最近、大動脈瘤壁組織の免疫組織学的検討においてアネキシンIIが濃染することを明らかにし、瘤形成における線溶系の関与を示唆しました。
Expression of annexin II in human atherosclerotic abdominal aortic aneurysms.
Thromb Res. 2008;123(2):274-80.
以上、私たち血栓止血研究室は、生体の最も基本的な生理反応である止血と、人類が克服すべき血栓症を扱っています。また、この領域は追求する程に味わいのある深淵な学問であると思っています。志を同じくする同志が一人でも増えることを願ってやみません。
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52| 血栓止血(血管診療) | コメント(0)