DIC病型分類の問題点
DIC病型分類の利点 より続く
前回の記事で、播種性血管内凝固症候群(DIC)診療における、病型分類の概念の利点を書かせていただきましたので、今回は問題点に言及したいと思います。
DIC病型分類の問題点
1)分子マーカーの結果が即日でない
施設によって、病型分類に用いられるTATやPICの結果が迅速に得られない点が挙げられます。測定結果の遅れは、治療開始の遅れにつながります。
ただし、だから分子マーカーが組み込まれた診断基準や病型分類は実用的ではないという考え方にいくのではなくて、分子マーカーを組み込むことで、これらのマーカーの普及につなげると言った、前向きの発想に転換したいところです。
10年後も、院内で分子マーカーの測定ができないようですと、10年経ってもDIC診療の発展がないことになってしまいます。
今後病型分類の普及とともに、TATやPICの院内測定率がアップすることを期待したいと思います。
2)感染症DICの超急性期の問題点
DICの病態は多様性に富み、かつ経時的に変動していますので、病型分類にはいくつかの例外が存在すします。
例えば、線溶抑制型DICに代表される感染症DICにおいて、極めて早期に血液検査を行いますと、PICが著増している(10μg/ml以上)場合があります。
チンパンジーにエンドトキシンを投与した実験では、投与後120分でPICがピークに達し、2時間遅れてTATがピークとなります(上図)。
Levi M, Cate Ht, Bauer KA, et al : Inhibition of endotoxin-induced activation of coagulation and fibrinolysis by pentoxifylline or by a monoclonal anti-tissue factor antibody in chimpanzees. J Clin Invest 93 : 114-120, 1994.
つまり、敗血症DICでは凝固活性化よりも早期に線溶が活性化されると考えられ、超急性期に検査すると線溶亢進状態を示す可能性があるのです。
3)TATの限界
線溶抑制型DICの中には、著明な凝固活性化が生じているにもかかわらず血中TATが軽度上昇にとどまり、SFが増加している症例があります。
こういった症例はむしろ予後が悪い印象がありますが、その理由についてはよくわかっていません。今後の検討課題ではないかと思います。
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:01| DIC | コメント(0)