金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年06月24日

第VIII因子インヒビターとHO-1

血友病の治療は、凝固因子製剤により満足すべきものになっています。

重症血友病に対しては、予防的投与法も浸透してきたのではないかと思います。


しかし、インヒビターの発症は、現在においても血友病治療の大きな問題点になっています。

今回紹介させていただく論文は、 Heme oxygenese-1(HO-1)の可能性を検討した興味ある報告です。



「第VIII因子マウスにおけるHO-1の誘導は第VIII因子インヒビターの発現を抑制する


著者名:Dimitrov JD, et al.
雑誌名:Blood 115 : 2682-2685, 2010.

<論文の要旨>

血友病A症例に対して、第VIII因子製剤による補充療法を行いますと、30%の症例において第VIII因子インヒビター(IgG)を発症することが知られています。繰り返される出血に伴う慢性炎症は、FVIII因子インヒビター発症の危険因子と推測されます。

Heme oxygenese-1(HO-1)は、ストレスにより誘導される酵素であり、強力な抗炎症作用を有することが知られています。著者らは、マウスにおいて第VIII因子製剤投与前にHO-1を誘導しますと、著明に第VIII因子インヒビターの発現を抑制することを示しています。

この現象は、HO-1の代謝産物であるCOやビリルビンでも再現され、HO-1のインヒビターであるtin mesoporphyrin IXによって妨げられたため、HO-1に特異的な現象と考えられました。HO-1の誘導は、脾における抗原提示細胞のMHC class II発現の低下と、T細胞増殖の抑制を伴っていました。

血友病A患者における第VIII因子インヒビター発症を抑制するために、第VIII因子製剤を投与する前に内因性抗炎症機序を賦活化することは、新しい治療戦略ではないかと考えられました。



(補足)
HO-1は、LPS、炎症性サイトカインで誘導されますが、スタチンやクルクミンなどでも誘導されることが知られています。



【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44| 出血性疾患 | コメント(0)

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