金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年06月27日

アミロイドーシスと後天性第X因子欠損症

アミロイドーシスでは、出血傾向をきたすことが知られています。

その機序に関しましては、まだ完全に解明されていないと思いますが、1)第X因子活性が低下する(血液凝固第X因子のアミロイド繊維への沈着)、2)線溶活性化がみられる、といった報告が見られています。

今回紹介させていただく論文は、アミロイドーシスの止血管理に関するものです。




「全身性ALアミロイドーシスにおける後天性第X因子欠損症(周術期の出血リスクと治療効果:60症例での検討)


著者名:Thompson CA, et al.
雑誌名:Am J Hematol 85: 171-173, 2010.


<論文の要旨>

全身性ALアミロイドーシスにおいては、後天性第X因子欠損症を合併することが知られていますが、この凝固異常に対する適した管理法は知られていません。

著者らは、観血的治療が必要となった第X因子活性低下(50%以下)を伴ったALアミロイドーシス60症例(1975〜2007年)について検討を行っています。

第X因子活性の低下度により、重症(<10%;n=6)、中等症(10〜25%;n=15)、軽症(26〜50%;n=39)に分類されました。


観血的処置合計122回のうち、19回(17%)において周術期に止血剤による治療が行われました。14回(13%)の処置時に合併症がみられました(出血12回、血栓症1回、死亡1回)。

第X因子活性の基礎値によって、出血を予知することはできませんでした。処置後の出血と唯一関連がみられたのは、中心静脈カテーテル留置術でした。しかし、軽症または中等症において血管とは関連のない処置を行う場合は、出血の合併症は比較的低頻度でした。

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)は、大出術時の止血管理に有効である可能性がありますが、今後検討課題です。



【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35| 出血性疾患