金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2010年06月28日

非血友病小児患者に対する遺伝子組換え活性型第VII因子製剤

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)は、第VIII因子インヒビター(先天性血友病におけるインヒビター、後天性血友病)に対して保険が通っています。

ただし、日本のみならず、全世界的に適応外使用がなされているという現状があります。

これは、あらゆるタイプの出血に対して、優れた効果を発揮するためではないかと思います。

今回紹介させていただく論文は、小児の非血友病に対しても、rFVIIaが有効であったことを報告しています。




「非血友病小児患者における止血治療薬としての遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)


著者名:Chuansumrit A, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 21 : 354-362, 2010.


<論文の要旨>

著者らの施設では、非血友病小児患者103例(新生児9例、乳児16例、それ以上の小児78例)の108回の出血に対して、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)による加療が行われましたが、それら症例について後方視的検討が行われました。

出血は2群に分類されました。

 

1群:

血液製剤に反応しない血小板数減少および凝固異常に起因する進行性大量出血に対して治療を行った群(デング熱、致命的な術中、術後出血:n=86)。

2群:

凝固異常を伴う慢性肝疾患を有した患者、および前もった出血傾向はないものの基礎疾患のために出血のリスクが高いと考えられた患者における、観血的処置時の出血予防治療を行った群(n=22)。


1群における止血効果は、2群よりも有意に劣っていました。

また、rFVIIaの使用量は、1群においては2群の2倍でした。出血または基礎疾患による全体での死亡率は、31.1%(32/103)でした。rFVIIaの投与を受けた3例(2.9%)において有害事象がみられました(心疾患に対する術中・術後出血に、rFVIIaを使用した症例)。

以上、血友病でなくとも、小児における止血管理目的に、rFVIIaは安全かつ有効と考えられました。



【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56| 出血性疾患