2010年06月29日
軽症血友病Aについて
血友病に関して、軽症の症例が問題になってきているということは、それだけ血友病の治療が発展してきたということの裏返しなのかも知れません。
最近、軽症の血友病に関する論文が少なくないように感じています。
「軽症血友病Aについて」
著者名:Franchini M, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8 : 421-432, 2010.
<論文の要旨>
軽症血友病A(HA)は、臨床症状と第VIII因子活性(0.05〜0.40 IU/mL)より診断されます。
軽症HAに特徴的な遺伝子変異が知られており、臨床症状は重症HA(自然出血やくり返す関節内出血)とは異なります。
軽症HAは加齢とともに癌や心血管疾患を合併するようになりますと、その管理が問題となります。さらに、軽症HAであってもインヒビターを発症しますと、出血症状は重症化し管理が困難になります。
軽症HAにおいては、小出血や小手術の際にデスモプレシンや抗線溶薬(トランサミン)でも充分なことがありますが、大出血や大手術の場合は第VIII因子製剤が必要となります。
インヒビターを発症した症例に対してはバイパス製剤(ファイバ、ノボセブンなど)が出血に対して有効ですが、免疫寛容療法に関しては軽症HAでのデータは乏しく一定の見観はありません(参考:後天性血友病)。
リツキシマブは、インヒビターを消失させる治療として最近期待されています。
軽症HAに関してはいろんな点で不明な部分が多く、分子生物学、自然経過、適切な診断法&治療戦略についての検討が必要です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 22:24| 出血性疾患