金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年07月06日

ダビガトラン:抗トロンビン薬(6)

Ximelagatran(キシメラガトラン):抗トロンビン薬(5)より続く

 
  【ダビガトラン

抗トロンビン薬 (ヒルジン、アルガトロバン他)インデックス

抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法(アスピリン、ワーファリン)
PT(PT-INR)とは?

ダビガトランエテキシレート(dabigatran etexilate)は、経口抗トロンビン薬として海外では既に使用可能な薬物です。7)8)9)。

7.    Schulman S, Kearon C, Kakkar AK, et al: Dabigatran versus warfarin in the treatment of acute venous thromboembolism. N Engl J Med 361: 2342-2352, 2009.

8.    Connolly SJ, Ezekowitz MD, Yusuf S, et al: Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 361: 1139-1151, 2009.

9.    Eriksson BI, Dahl OE, Rosencher N, et al: Dabigatran etexilate versus enoxaparin for prevention of venous thromboembolism after total hip replacement: a randomised, double-blind, non-inferiority trial. Lancet 370(9591): 949-956, 2007.



プロドラッグであるダビガトランエテキシレートは、消化管から吸収されるとエステラーゼによる代謝を受けて活性代謝産物であるダビガトランに変換されます。ただし、本薬の吸収はPHに依存しており、PPIの併用により吸収が低下することが知られています。

内服後2〜3時間後に血中濃度がピークとなり、ダビガトランの半減期は12〜17時間です。

約80%は腎から代謝されるために、腎不全患者では注意が必要ですが、一方で肝不全患者に対してはあまり支障ありません。


ダビガトランは、トロンビンの活性部位に結合し、トロンビン活性を特異的に抑制します。

液相のトロンビンのみならずフィブリンに結合したトロンビンを不活化します。また、血小板第4因子などの血漿タンパク質と結合しにくいために、効果に個人差が少ないのも特徴です。

用量依存的に、凝固検査であるPTやAPTTを延長させます。


臨床試験の結果、人工股関節全置換術の静脈血栓塞栓症発症予防および死亡率を低下させ、低分子ヘパリンであるエノキサパリンと同等の効果がえられました。

また、出血の副作用出現も、エノキサパリンと同等でした。

本薬は、欧州において人工股関節置換術、人工膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症発症予防薬として認可されています。

 

(続く)

経口抗Xa薬&抗トロンビン薬の今後:抗トロンビン薬(7)

 


【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58| 抗凝固療法