先天性第VII因子欠損症における出血と血栓症
先天性第VII因子欠損症は、教科書的にはPTの延長でスクリーニングされるはずですが、PTの延長が軽度のこともあり、見逃しそうになることがあります。
第VII因子が半減したヘテロ接合体では、ほとんど症状はみられないことの方が多いです。このことも、見逃しそうになる理由になります。
今回紹介させていただく論文は、先天性第VII因子欠損症で門脈血栓症を発症したというミステリアスな報告です。
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「先天性第VII因子欠損症における門脈血栓症」
著者名:Klovaite J, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 21: 285-288, 2010.
<論文の要旨>
先天性第VII因子欠損症においては、ほとんどの場合出血傾向が問題になりますが、時に血栓塞栓症の合併症があることに注意が必要です。この場合、観血的処置や補充療法を契機とすることが多いです。しかし、明らかな契機なく血栓症を発症することもありえます。
著者らは、慢性の門脈血栓症を合併した先天性第VII因子欠損症の女性症例を報告しています。
患者は妊娠32週にあり、プロトロンビン時間(PT)の延長(INRの上昇)(APTTは正常)と、血小板数の著減所見をみとめていましたが、特別な症状はありませんでした。
精査の結果、門脈が海綿静脈洞化(シャントを伴う)していることが確認されました。
また、FVII遺伝子に3つのしばしばみられる多型性がみられました。第VII因子活性性の低下はみられましたが、他の血栓性素因はありませんでした。
以上、先天性第VII因子欠損症には出血のみでなく、血栓症の合併症にも注意が必要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04| 出血性疾患