金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年08月05日

診断基準:血球貪食症候群(HPS)(4)

症状&身体所見:血球貪食症候群(HPS)(3) より続く。

 

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HPS/HLH診断基準(HLH-2004)

以下のいずれかを満たせばHPS/HLHと診断される。

1.  HPS/HLHに一致する分子診断が得られる。

2.  以下の8項目中5項目以上を満たす。

1)発熱

2)脾腫

3)2系統以上の血球減少
・ヘモグロビン9 g/dL未満(4週未満の乳児は10 g/dL未満)
・血小板数10万/μL未満
・好中球数1,000/μL未満

4)高トリグリセライド血症または/および低フィブリノゲン血症
空腹時トリグリセライド265 mg/dL以上
フィブリノゲン150 mg/dL以下

5)骨髄または脾臓またはリンパ節における血球貪食像、悪性腫瘍がない

6)NK細胞活性の低下または消失

7)フェリチン500 μg/L以上

8)可溶性IL-2レセプター2,400 U/mL以上


付記:
1) 発症時に血球貪食が明らかでなければ、さらに検索を進める。骨髄所見陰性の場合、他臓器の生検や経時的な骨髄穿刺検査を考慮する。

2) 以下の所見は診断を強く支持する:髄液細胞増加(単核球)および/または髄液蛋白増加、肝生検上慢性持続性肝炎に類似した組織所見。

3) 以下の所見は診断を支持する:脳・髄膜症状、リンパ節腫脹、黄疸、浮腫、皮疹、肝酵素異常、低蛋白血症、低ナトリウム血症、VLDL増加、HDL低下。
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【HPS/HLHの診断基準】


HPS/HLHの診断基準は、Histiocyte Society (http://www.histiocytesociety.org/)のHLH-2004(表:上)が最も有名です。

ただし、HLH-2004は小児HPS/HLH診断を主眼にしているため、以下のような問題がありました。

・悪性腫瘍関連HPS/HLHを想定していない

高トリグリセライド血症・低フィブリノゲン血症は成人にほとんどみられない

必要な項目数が多い

そこで、2009年にHLH-2004の改訂案(表:下)が発表されました。

Filipovich AH: Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH) and related disorders. Hematology Am Soc Hematol Educ Program:127-31, 2009

 

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HPS/HLH診断基準(2009年のHLH-2004改訂案)

以下のいずれかを満たせばHPS/HLHと診断される。

1. HPS/HLHまたはXLPの分子診断が得られる。

2. Aの4項目中3項目以上、Bの4項目中1項目以上を満たす。C項目はHPS/HLH診断を支持する。

A項目
1)発熱
2)脾腫
3)2系統以上の血球減少
4)肝炎様所見

B項目
1)血球貪食像
2)フェリチン上昇
3)可溶性IL-2R上昇
4)NK細胞活性の低下または消失

C項目
1)高トリグリセライド血症
2)低フィブリノゲン血症
3)低ナトリウム血症

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この改訂案はHPS/HLHを速やかに診断できるので、臨床上利便性が高いです。

なお、HPS/HLH発症直後は診断項目が揃わず、発症後晩期に診断基準を満たす場合もあります。

診断の遅れによる治療失敗を避けるため、臨床所見上HPS/HLHが強く疑われれば、診断基準を満たさずとも治療開始を検討してよいと考えられます。

Henter J-I, et al: HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatric Blood & Cancer 48:124-131, 2007.


 

(続く)

一次性・二次性HPS/HLHの診断:血球貪食症候群(HPS)(5) へ

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| 血液疾患(汎血球減少、移植他)