一次性・二次性HPS/HLHの診断:血球貪食症候群(HPS)(5)
診断基準:血球貪食症候群(HPS)(4) より続く。
一次性・二次性HPS/HLHの診断
臨床像や組織所見から一次性・二次性HPS/HLHを区別することは難しいです。
家族歴があれば一次性を疑いますが、FHLは常染色体劣性遺伝のため、家族歴が不明の場合も多いです。また、遺伝子検査は時間を要します。
そこで、発症年齢からある程度原疾患を推定します。全国調査によりますと、1歳未満のHPS/HLHはFHLと感染症関連HPS/HLH (IAHS)が多いです(上図)。
Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86:58-65, 2007
若年例はEBVを中心にIAHSが多く、年齢が高まるにつれLAHSの割合が増加します。
一次性HPS/HLH
FHLの20-50%はperforin遺伝子PRF1 (10q21)変異が証明され、NK細胞・T細胞の細胞傷害活性が欠失します(分類:血球貪食症候群(HPS)(2) )。
FHLの10-20%はMUNC13-4遺伝子UNC13D (17q25)変異で起こり、約10%はsyntaxin 11遺伝子STX11(6q24)変異で起こります。
XLP患者の60-70%はSAP(SH2-DIA or DSHP)(Xq25)に変異がみられます。
Chediak-Higashi症候群はLYST1(1q42)に関連して起こります。
Griscelli症候群2型はRab27A遺伝子変異が関与しています。
EBV関連HPS/HLH (EBV-associated HPS/HLH: EBVAHS)
EBVAHSは全年齢層でみられます(上図)。
EBVAHSの一部は自然軽快しますが、急激に致死的経過をたどることもあります。
HPS/HLHに対しては、in situ hybridization法やPCR法、サザンブロット法(クロナリティの決定)などEBVゲノムの検索が必要です。
LAHS(lymphoma-associated HPS/HLH)
成人HPS/HLHの過半数はLAHSです。
特に血管内リンパ腫(アジア亜型)などB細胞性リンパ腫はリンパ節腫脹が無い場合も多く、診断に苦慮しやすいです。
骨髄や採取組織は、免疫グロブリン/T細胞レセプター遺伝子再構成、フローサイトメトリー解析などクロナリティの検索を積極的に行い、診断の補助とします。
診断のため、ランダム皮膚生検や経気管支肺生検を考慮しても良いです。
Asada N, et al: Use of random skin biopsy for diagnosis of intravascular large B-cell lymphoma. Mayo Clin Proc 82:1525-7, 2007.
(続く)小児HPS/HLHの治療と予後:血球貪食症候群(HPS)(6) へ
移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
【シリーズ】溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
【シリーズ】造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 血液疾患(汎血球減少、移植他)