金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2010年08月29日

出血時間、PT、APTT:医学部CBT過去問解説

医学部4年生を対象にした、CBT過去問の予想問題の解説を試みたいと思います。

受験生の記憶をもとに再生した過去問ですので、実際の問題とは若干違っている可能性がありますが、ご了解いただきたいと思います。

 

 

6歳の男児。出血時間延長、PT正常、APTT延長。

この病態を示す疾患は、以下のなかで何か。

a Bernard-Soulier症候群
b von Willebrand病
c 血友病
d 血小板無力症
e 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
f  血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
g 播種性血管内凝固症候群(DIC)
h アレルギー性紫斑病
i  ビタミンK欠乏症

 

 

 

【解説】

出血時間の延長(以下の3つの病態のみです)

1.    血小板数の低下:e、f、g

2.    血小板機能の低下:a、b、d

3.    血管壁の脆弱性(+)

(c、h、iは出血時間正常)

 

von Willebrand病(vWD)では、von Willebrand因子(vWF)が低下します。

vWFは血小板粘着に必要な因子であり、vWDでは血小板粘着能(血小板機能)が低下して出血時間が延長します。


PTの延長
VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)のいずれかの活性が低下:g、i


APTTの延長
XII、XI、IX、VIII、X、V、II、Iのいずれかの活性が低下:b、c、g、i
vWDでは、vWFが低下しますが、vWFは第VIII因子のキャリア蛋白であるため、本疾患では第VIII因子活性も低下します → APTT延長


 

【正答】

b von Willebrand病 

 

【解説】

von Willebrand病(vWD)

1.    常染色体性優性遺伝(男女とも発症) (cf.血友病は、伴性劣性遺伝で男性のみに発症)。

2.    粘膜出血 :鼻出血など(cf.血友病は、関節内出血、筋肉内出血)。

3.    出血時間&APTTの延長。血小板粘着能の低下。PTや血小板数は正常。血小板凝集能のリストセチン凝集の低下(cf.血友病は、PT&出血時間正常、APTT延長)。

4.    von Willebrand 因子 (vWF) の低下。第VIII因子も低下!

5.    治療:血漿由来血液凝固第VIII因子製剤(第VIII因子濃縮製剤だが、vWFも混入している) 、抗利尿ホルモン剤の DDAVP(デスモプレシン)




【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16| 医師国家試験・専門医試験対策