特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とTPOペプチド類似薬Romiplostin
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、抗リン脂質抗体症候群(APS)などと共に、血液内科での診療頻度の高い疾患です。
今回紹介させていただく論文は、TPOペプチド類似薬であるRomiplostin(ロミプロスチン)の効果と副作用の懸念の有無について論じています。
「慢性ITPに対するロミプラスチンの投与と、出血および血栓症への影響」
著者名:Gernsheimer TB, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 1372-1382, 2010.
<論文の要旨>
Romiplostin(ロミプロスチン;R薬)は、TPOペプチド類似薬であり、慢性ITPに対して長期間投与すると血小板数の上昇が期待できます。
本薬は免疫原性の低い血小板増殖因子として知られています。
本薬は、血小板数の上昇によって出血リスクを減らす一方で、血栓症を誘発するのではないかという懸念もされています。
著者らは、慢性ITPを対象としたR薬の第III相臨床試験(プラセボを対照とした24週間の試験と、その後に引き続くR薬のみの治療試験)において、上記の点の評価を行いました。
慢性ITP 125症例がR薬群またはプラセボ群に分類されました。
その結果、プラセボ群では中等症以上の出血が34%でみられたのに対して、R薬群では15%でした(P=0.018)。
その後のR薬治療試験では、中等症以上の出血有害事象は最初の24週では23%であったのに対し、24〜48週では12%、その後は6%以下となりました。
また、血栓症の有害事象は両群間で有意差は見られませんでした。
以上、R薬は慢性ITPにおける出血に対して有効であり、血栓症の有害事象も増やさないものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23| 出血性疾患