金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年10月06日

肝疾患における凝固異常

肝疾患では、凝固因子が低下して出血しやすい状態になりますが、一方で、アンチトロンビン(AT)プロテインC(PC)などの凝固阻止因子も低下するために、肝疾患での易出血状態は緩和されている可能性もあります。

 

今回、紹介させていただくBloodの論文はその点を論じています。

 

「肝疾患を有した患者における止血バランス」

著者名:Lisman T, et al.
雑誌名:Blood 116: 878-885, 2010.


<論文の要旨>


肝疾患を有した患者においては、しばしば複雑な止血異常をきたします。通常の血液検査のなかではプロトロンビン時間(PT)や血小板数の異常をきたし、止血障害所見をきたします。


肝疾患患者においてさらに詳しく血液検査を行うと、このような患者においては凝固能と抗凝固能の両者が低下することにより、バランスが保たれている状態であることも理解できます。

この止血バランスの上にあって、肝疾患を有した患者の大部分は大手術の際に血液製剤の輸注が必要ないものと考えられます(参考:止血剤)。


しかし、この止血バランスは不安定であるために、周術期に出血および血栓症の両者の合併症をきたすことがあります。

肝疾患患者の観血的処置の前に、PTや血小板数の値によって血液製剤を予防的投与することは実際によく行われていますが、この方法は必ずしも根拠に基づいている訳ではありません。



この論文において著者らは、肝疾患を有する患者においては止血異常所見に伴う出血傾向をきたしやすいという伝統的な考え方に対して異議を唱えています。

また、肝疾患患者における止血管理について論じられています。



【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患