金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年10月11日

後天性凝固第V因子インヒビター

後天性凝固第V因子インヒビターは、稀な疾患と思われがちですが、トロンビン末の使用などに伴って出現することもあり(トロンビン末の使用頻度を考えると)、実は意外と少なくない疾患なのかも知れません。

後天性凝固第V因子インヒビターの症例報告を紹介させていただきます。

 


「プレドニゾロンが著効した後天性凝固第V因子インヒビターの症例」

著者名:山之内純 他。
雑誌名:日本血栓止血学会誌 21 :391-394, 2010.


<論文の要旨>

症例は82歳、男性、40年前から尋常性乾癬に罹患しています。2008年11月に転倒し、右前腕、右下腿を受傷しましたが、受傷部位からの出血が持続するために近医を受診しました。

血液検査では、血小板数正常、PT<5%、APTT>200秒で、凝固第V因子活性を測定したところ3%未満で、インヒビターは7 B.U./mlでした。後天性凝固第V因子欠乏症と診断し、新鮮凍結血漿の投与を行い止血が得られました。

その後、第V因子活性は徐々に増加してきたため経過をみていましたが、2009年10月、下血をきたしたため再度受診しました。第V因子活性の低下とインヒビター力価の上昇を認めました。この時、急性ラクナ梗塞を併発しました。下血と梗塞後出血予防のためプレドニゾロンの投与を行ったところ、第V因子活性は速やかに正常となり、インヒビターも消失しました。

後天性凝固第V因子インヒビターは、数ヶ月以内に自然消失することが多く、免疫抑制剤の効果は確立していません。本例は約1年にわたり凝固異常が持続しましたが、プレドニゾロン投与で極めて速やかに改善し、免疫抑制療法の著効例と考えられました。

 


<補足>

第V因子インヒビター


臨床症状

・ 無症候〜致死的出血

・ インヒビターの力価と無関係

・ 出血傾向:自己抗体>医原性抗体

・ ほとんどが一過性で,数か月で消失

 

医原性抗体ウシトロンビン製剤、βラクタム系抗生剤,輸血など

自己抗体:悪性新生物,妊娠・分娩など

 

治療

・ 補充療法:FFP、濃厚血小板製剤

・ 免疫療法:免疫抑制剤、γ‐グロブリン大量療法

・ 抗体除去:血漿交換/体外循環免疫吸着法 

 

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44| 出血性疾患