先天性第XI因子欠損症
先天性第XI因子欠損症は、アシュケナージ系ユダヤ人に多いことが知られていますが、日本人では稀な疾患です。
しかし、手術や観血的処置に伴って、問題になることがありますので、知っておきたい疾患です。
(参考:凝固異常症の遺伝子解析)
「先天性第XI因子欠損症について」
著者名:Martin-Salces M, et al.
雑誌名:Clin Appl Thromb Hemost 16 : 203-213, 2010.
<論文の要旨>
先天性第XI因子欠損症はまれな先天性出血性素因です(ただし、アシュケナージ系ユダヤ人にみられやすく1/450人です)。
本疾患においてはFXI因子活性と出血症状との間に相関が見られないことが知られています。重症例においては、手術や外傷後の高度な出血がみられ、特に線溶能の亢進した組織における外傷での出血は重症です。
女性においては、出産時に大出血がみられることがあります。
先天性第XI因子欠損症では、妊娠中や出産時の出血を予測することが不可能であるため、治療に難渋することがあります。
<補足>
先天性第XI因子欠損症
(1) 発症頻度;1/100万
(2) 遺伝形式;常染色体劣性
(3) 診断の契機;術前検査(APTTの延長)で偶然見つかることが多い。FXI活性と出血症状が相関しない(1%以下でも無症候のことあり)。
(4) 線溶亢進の組織で出血しやすい(ex.抜歯、歯肉手術、扁桃摘術、鼻手術、前立腺切除術など)
(5) 治療:FFP;5〜20ml/kg
1. 大手術、前立腺・口蓋扁桃など・線溶活性が高い部位の手術・外傷;FXI45%以上、10〜14日間
2. 小手術;30%以上、5日間
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 20:23| 出血性疾患