金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年10月15日

血友病のインヒビターと免疫寛容療法

血友病症例においてインヒビターを発症しますと、血液凝固因子製剤の効果が激減しますので、大変苦慮します(参考:後天性血友病)。

しかも、より血液凝固因子製剤の必要性の高い重症症例でインヒビターが出現しやすいので、大きな問題となっています。しかし、有効ないくつかの対処法があります。

今回紹介させていただく論文は、重症血友病Aにインヒビターを発症した症例に対する免疫寛容療法について論じています。

 

 

「重症血友病Aにインヒビターを発症した症例に対する免疫寛容療法

〜 根拠に基づいたアプローチへ 〜


著者名:Coppola A, et al.
雑誌名:Br J Haematol 150: 515-528, 2010.

 

<論文の要旨>

免疫寛容療法(immune tolerance induction: ITI)は、重症血友病Aにインヒビターを発症した場合に、インヒビターを消失させる方法として、唯一効果を期待できる治療法です。

30年にわたる経験より、各種用量によるITIの成功率は60〜80%と高く、患者の治療予後を規定する臨床所見を同定することが重要視されてきました。


最近インヒビターを発症した小児患者がITIの最も良い適応であり、更に、適切な治療が加えられることによって、ITIの短期および長期的予後を改善することができます。


ITI治療に成功した症例においては、第VIII因子製剤の予防投与が不要となり、関節症発症を阻止することになるため、結局は経費節減につながるメリットもあります。


インヒビターが長期間にわたり存在している大人においては、ITI治療の有効率は悪いですが、バイパス製剤でコントロールすることが困難な出血を頻回にきたし、整形外科的な治療が必要になるような症例においては、ITI治療の適応があり医療費節減のメリットもあります。


このように、症例毎の異なった状況における最適なITIの治療プロトコール確立が必要と考えられるため、無作為の臨床試験が必要と考えられます。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41| 出血性疾患