後天性血友病Aと遺伝子組換え第VII因子製剤
血友病といえば、通常先天性の疾患をすぐに連想しますが、近年は後天性血友病も大変話題になっています。
後天性血友病の発症率は、100万人に1人と言われてきましたが、おそらく実際はもっと多いのではないかと思われます(いわゆる診断されなかった見逃し症例がありうるのではないかと思われます)。
管理人の個人的な経験でも、この2〜3年で数例の後天性血友病に遭遇させていただいたと思います。100万人に1人という感じではありません。
今回紹介させていただく論文は、後天性血友病A 34例に対する遺伝子組換え第VII因子製剤の使用経験がまとめられています。
「後天性血友病A 34例における臨床症状、手術、治療およびrFVIIaの使用経験」
著者名:Lak M, et al.
雑誌名:Clin Appl Thromb Hemost 16: 294-300, 2010.
<論文の要旨>
後天性血友病Aは、第VIII因子に対して自己抗体が出現し致命的な出血をきたす稀な疾患です。
著者らは、後天性血友病A 34例(1999.12〜2007.12)を対象に、疫学、臨床症状、治療内容に関する情報を収集しました。
その結果、8例(23.5%)は低力価(<10 BU)であり、26例(76.5%)は高力価(>10 BU)でした。
全体では、548.4±359.3(平均±標準偏差)BUでした。
最も高頻度にみられた出血症状は血腫で(21例:33.3%)、皮下出血16例(25.4%)、関節内出血8例(12.7%)、血尿6例(9.5%)、性器出血4例(6.3%)でした。
インヒビターを消失させるための免疫抑制療法が行われ、有効27例(79.4%)、一部有効5例(14.7%)、無効2例(5.9%)でした。
ステロイド単独療法または、他剤と併用したステロイド療法により、ほとんどの症例で完全寛解を得ることが可能でした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01| 出血性疾患