血漿中第VIII因子:抗原量と活性
血漿中の第VIII因子は、通常は凝固時間法による活性測定が行われています。果たしてそれで良いのでしょうか。
今回の論文は、測定法により差が出ることを論じています。
注目すべき論文ではないかと思います(参考:血友病)。
「血漿中第VIII因子濃度が正常であることの意義」
著者名:Butenas S, et al.
雑誌名:Thromb Res 126: 119-123, 2010.
<論文の要旨>
凝固時間を利用した第VIII因子(FVIII)の定量は、方法、検体処理法、試薬の質と性状、他の血漿中蛋白(とくにVWF)によって影響を受けます。
著者らは、凝固時間法によるFVIII量を免疫学的に得られるFVIII量と比較し、また、血漿稀釈が第VIII因子凝固活性(FVIIIc)に与える影響を検討しました。
APTT法、発色合成基質法(Coatest)、自家制の免疫アッセイ(2法)の間において比較しました。
健常人(HI)44人におけるFVIII抗原量は1.22±0.56 nM(平均±S.D.; 以下同様)であり、FVIIIc(0.65±0.29 nM)、発色合成基質法(FVIIIch;0.50±0.23 nM)よりも高値となりました。
FVIIIagとVWFagの間には正相関がみられました(r2=0.20)。
血漿中VWFはFVIIIcに対して抑制的に作用することが知られているため、HI(n=105)検体において検体稀釈がFVIIIcに及ぼす影響を評価しました。
4倍稀釈を行ったところ、FVIIIcはFVIIIagよりもはるかに低値となりました(それぞれ、0.77±0.31vs. 1.14±0.48nM)。10倍稀釈、25倍稀釈では、それぞれ0.87±0.36、0.94±0.44nMとなりました。
以上、血漿検体においてFVIIIagは、FVIIIcやFVIIIchよりも高値となること、血漿中FVIIIの本当の値はFVIIIagで評価すべきであることが示されました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49| 出血性疾患