妊娠と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血液内科が担当する疾患としては、最も多い疾患の一つではないかと思います(参考:ITP/医師国家試験対策)。
あるいは、血液内科以外の領域を専門とする内科医にとっても、日常臨床においてしばしば診療の機会があるのではないかと思います。
今回紹介させていただく論文は、妊娠女性のITPを論じたものです。
「妊娠のITPに関する後方視的検討」
著者名:Fujita A, et al.
雑誌名:Int J Hematol 92: 463-467, 2010.
<論文の要旨>
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、妊娠した女性においてもみられることがある疾患です。
著者らは自施設で経験した妊娠ITP症例の臨床的特徴について検討しました(2000年3月1日〜2008年3月31日の期間の症例)。
妊娠ITPの20症例で、23回の出産、24児が対象となりました。以下のような検討結果が得られました。
・ 8症例においてステロイド治療が行われましたが、反応しなかったのは1例のみでした。
・ 母親の血小板数と出産時の出血量との間には相関はみられませんでした。
・ 新生児2例においては血小板数3万/μl未満となり、免疫グロブリン大量療法による治療が行われました(1例ではステロイド治療も受けました)。
・ 出産時の母親の血小板数と、出生児の血小板数との間には相関はみられませんでした。
・ 全体として、母親にも出生児にも高度な出血はみられませんでした。
以上、妊娠ITP症例においても、血液専門医と産科専門医の充分な管理が行われていれば、高度の血小板数低下がみられる場合であっても、妊娠合併症はみられないものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18| 出血性疾患