金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年01月19日

IgA欠損症へのプロトロンビン複合体製剤とアナフィラクシー

今回紹介させていただく論文は、こういうこともあるのかと、はっとさせられる論文です。

プロトロンビン複合体製剤には、各種免疫グロブリン(IgAを含む)が含まれているようです。

抗IgA抗体によりIgA欠損症となった症例などのように、免疫グロブリンに対して抗体を有している症例対して、プロトロンビン複合体製剤を投与する場合には注意が必要です。

 

「抗IgA抗体によるIgA欠損症症例に対するPCCの投与とアナフィラクシー反応

著者名:Chowdary P, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 21: 764-765, 2010.


<論文の要旨>

抗IgA抗体によりIgA欠損症となった症例に対して、プロトロンビン複合体製剤(PCCs)を使用することは、絶対的あるいは相対的惹起とはなっていません。

著者らは、抗IgA抗体を有し、他の血液製剤に対してアナフィラクシー反応の既往のあるIgA欠損症の症例に対して、PCCを投与したところアナフィラクシー反応を起こした症例を報告しています。

PCCsを調査したところ、さまざまな量の各種免疫グロブリン(IgAを含む)が含まれていることが明らかになりました。

各社より製造されているPCCsの添付文書には、IgA欠損症(抗IgA抗体に起因する)に対しては禁忌とは書かれていませんが、PCCsにはIgAが存在しない訳ではないため、特にアナフィラクシー反応の既往のある症例においては充分な注意が必要と考えられました。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34| 出血性疾患