デスモプレシン(DDAVP)による止血治療
デスモプレシン(DDAVP)は、von Willbrand病(vWD)の止血治療薬としても知られていますが、vWDの疑診例に対しても使用されることがあるようです(参考:止血剤の種類と疾患:ノボセブン、アドナ、トランサミンなど。)。
DDAVPは、血液凝固因子製剤と比較して、安価である点も魅力です。
今回紹介させていただく論文は、DDAVPをvon Willbrand病(vWD)type1および vWD type1疑診例に対して、DDAVPを投与した結果を評価したものです。
「vWF低値で出血既応者に対するデスモプレシン(DDAVP)投与とその生物学的および臨床的反応」
著者名:Sanchez-Luceros A, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 104: 984-989, 2010.
<論文の要旨>
著者らは、出血の既往を有しvon Willbrand因子(vWF)が低値の小児に対して、デスモプレシン(DDAVP)投与した場合の生物学的および臨床的反応を評価しました。
対象は小児221例(平均年齢1才、女性138例)で、その内訳は、von Willbrand病(vWD)type1 27例(vWF:15〜30IU/dl)、vWD type1疑診194例(vWF:31〜49IU/dl)です。
DDAVP投与試験が 214/221例で行われ、93.4%では反応良好でした。
DDAVPに反応不良であったのは、vWD例で9/26(34.6%)、vWD疑診例で18/188(9.6%)でした(P=0.002)。
小児68例においてDDAVPの臨床効果が87回評価されました。
すなわち、i)止血:過多月経(13)、粘膜皮膚出血(12)、関節内出血(1)、ii)手術時の出血予防:扁桃腺摘出術(17)、大手術(15)、小手術(10)、抜歯(19)です。
副作用や出血はみられませんでした。
ほとんどの症例において1回目の投与で効果がみられましたが、女性1例では高度の過多月経がみられて補充療法を必要としました。
以上vWD type1症例はvWD疑診例と比較して、DDAVP投与試験で無反応例がより多い結果でした。
また、小児vWD症例に対してDDAVPは1回投与のみで有効かつ安全でした。
このようにDDAVPの有用性は高く、特に発展途上国においてより広く使用されてもよいと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02| 出血性疾患