血友病患者における心血管疾患の危険因子
血友病は先天性失血性素因ですが、血液凝固因子製剤による適切な治療により、出血により致命的になることがほとんどなくなりました。
一方で、血友病の患者さんが、普通に長寿化されるようになってきたことに伴い、出血ではなく、逆に血栓性疾患(心血管疾患)の問題がクローズアップされることがあります。
今回紹介させていただく論文は、この点を論じています。
「血友病患者における心血管疾患危険因子の評価」
著者名:Biere-Rafi S, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 105: 274-278, 2011.
<論文の要旨>
血友病患者は、一生にわたり第VIII因子またはIX因子が欠損しているために、心血管疾患に罹患しにくいという考え方があります。
一方で、血友病のような慢性疾患を有した人は、一般人と比較して心血管疾患の危険因子の割合が異なっている可能性があるために、著者らはこの点の検討を行いました。
成人血友病A&Bの、BMI、血圧、コレステロール値、空腹時血糖を測定し、年齢の一致した健常人と比較しました(血友病100名、健常人200名)。
血友病患者の平均年齢は47歳(18-83歳)でした。
血友病患者においては、高血糖24%、高血圧51%にみられ、これらは健常人よりも高頻度でした(それぞれ、P<0.001、0.03)。
LDLコレステロールの平均値は、血友病3.02mM、健常人3.60mMで、血友病患者において有意に低値でした(P<0.001)。
10年間における心血管疾患予想死亡率(European risk prediction algorithmで評価)は、血友病12%、健常人7%と有意差はありませんでした(P=0.18)。
以上、血友病患者における心血管疾患危険因子および予想死亡率は健常人と差はなく、凝固因子の先天性欠損は、心血管死亡率を低下させるという仮説を支持しているものと考えられた。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患