甲状腺機能低下症と後天性von willebrand病(VWD)
血友病といえば通常は先天性血友病ですが、近年は第VIII因子インヒビターの出現する後天性血友病が何かと話題です。
一方、von willebrand病(VWD)といえば通常は先天性のものをさしますが、近年は後天性のVWDも話題になりやすいです。
今回紹介させていただく論文は、甲状腺機能低下症に併発する後天性von willebrand病について論じています。
「甲状腺機能低下症と後天性von willebrand病」
著者名:Federici AB.
雑誌名:Semin Thromb Hemost 37: 35-40, 2011 .
<論文の要旨>
後天性von willebrand病(Acquired von Willebrand syndrome ; AVWS)は、先天性のvon willebrand病(vWD)と検査所見が類似しているまれな出血性素因です。
AVWSでは、VWDとは異なり出血の家族歴や既往歴はみられません。
AVWSの発症頻度は不明ですが、リンパ・骨髄増殖性疾患や心血管疾患でみられやすいことが知られています。
また、固形癌や自己免疫疾患、その他の疾患に合併することもあります。
その他の疾患の中には、甲状腺機能低下症があり、AVWS(type1)が2〜5%合併します。
文献的に報告された47症例において、VWFが低値である理由は、明らかなVWF産生低下や分泌障害のためであるとされています。
AVWSの診断はVWF抗原量・活性の測定に依存しています。
AVWSにおいては、VWF抗原量&活性は低値ですが、第VIII因子活性は正常です。
甲状腺機能低下症に合併したAVWSにおいては、粘膜・皮膚出が最もみられやすい出血症状であり、通常は局所止血治療と必要に応じて抗線溶薬やデスモプレシンの投与が有効です。
甲状腺ホルモンによる補充療法は、AVWSの凝固異常を回復させることが可能です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21| 出血性疾患