金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年03月14日

軽症〜中等症血友病Aと足関節症

血友病治療の重要な目標の一つは、関節症をおこさせずにQOLを低下させないことだと思います。

重症血友病では、関節症をきたしやすいのですが、軽症〜中等症血友病ではどうなのか、従来報告がありませんでした。

今回紹介させていただく論文はこの点を論じています。

 

「軽症〜中等症血友病Aにおいて足関節症が高頻度にみられる

著者名:Ling M, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 105: 261-268, 2011.


<論文の要旨>

軽症血友病Aにおいて関節症の頻度や重症度を検討した報告は過去にはありません。

著者らは、軽症〜中等症血友病A 34症例において足関節の関節症について検討を行いました。

症例は痛みの有無や程度について評価され、また身体所見のチェックやレントゲン学的なスコアリングが行われた。


その結果、16/34症例(47%)において足関節の痛みがみられ、そのうち9症例では中等症〜重症でした。また13症例においては日常生活上の制限がみられました。

レントゲン学的に評価された33症例中17例(52%)において関節症の所見がみられ、そのうち16例では身体的所見でもスコアリングされました。


第VIII因子活性が11IU/dl以下の症例においては、足関節症はより高頻度にみられました。

幼少時の足関節内出血の既往と足関節症の存在との間には明らかな相関関係がみられました。


以上、軽症〜中等症の血友病Aにおいて、足関節の関節症は高頻度にみられ(ときに重症で日常への影響があり)、幼少時の足関節内出血に起因しているものと考えられました。

 

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患