金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2011年03月19日

抗血栓療法:第XI(11)因子 & 抗トロンビン薬

このほど、経口抗トロンビン薬が登場して、 血栓症治療に新たな動きが見られています(ワーファリンの次を行く薬剤と言えると思います)。

参考:PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?


そんな中、将来の新しい血栓症治療戦略として、XI(11)因子の意義が注目されています。

 

 「抗血栓療法の新しいターゲットとしての第XI(11)因子

著者名:Lowenberg EC, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 2349-2357, 2010.


<論文の要旨>

血液凝固第XI因子(FXI)は、当初は凝固接触相における位置付けでした。

しかし、外因系&内因系凝固の古典的理論が見直されるに伴い、FXIはトロンビンにより活性化され、持続的なトロンビン形成と線溶抑制において重要な役割を演じていることが判明しました。


ヒトの先天性第XI因子欠損症においては出血症状が軽症であり、動物モデルにおいてFXIの欠損や抑制は出血傾向にならないという事実より、FXIは生体の止血にとってあまり重要でないらしいです。

一方で、FXI活性の上昇はヒトの血栓症発症の危険因子となり、動物モデルでFXIを抑制することにより、動脈・静脈血栓症に対して防禦的に作用します。


ヒトの第XI因子欠損症(重症例)は血栓塞栓症になりにくいかどうか明らかになっていませんが、本疾患では脳梗塞や静脈血栓症が低頻度であるといういくつかの報告がみられます。


以上、第XI因子を抑制することにより、出血の副作用を増やすことなく抗血栓的に作用することが期待され、今後の新しい治療戦略になるものと考えられます。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29| 出血性疾患