重症血友病A治療に対するrFVIIa&FXIII(治療応用)
血液凝固第XIII因子は、フィブリンの架橋化結合を行うことで、凝血塊を安定化させる作用を有しています。
今回紹介させていただく論文は、このFXIII因子の作用が、血友病の出血性素因に応用できないかどうかを論じています。
「重症血友病A治療におけるrFVIIaとFXIIIの併用治療の可能性について」
著者名:Rea CJ, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 510-516, 2011.
<論文の要旨>
血友病においては、トロンビン形成能の低下が主たる欠損機能です。
これまでの治療法は、血液凝固因子製剤による補充療法や、バイパス製剤たとえば遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:ノボセブン)による止血能の回復を目的としたものでした(参考:後天性血友病、第VIII因子インヒビター)。
また、過去の報告によると、血友病においては第XIII因子(FXIII)の活性化が抑制されています。
著者らは、血友病に対して血漿由来XIII(pdFXIII)を併用すると、rFVIIa単剤よりも凝血塊の安定性が向上するという仮説を検証しました。
血友病A14症例が対象となりました。
患者より全血が採取され、rFVIIa(2μg/mL)またはrFVIIa+ pdFXIII(10μg/mL)による実験が行われました。
組織因子(TF)0.15pM+tPA2nMで活性化した系で、全血トロンボエラストメトリーによる凝血塊安定度の評価(area under the elasticity curve : AUECによる)を行いました。
その結果、rFVIIa単剤に比較して、rFVIIaとpdFXIIIの併用は凝血塊の安定性を向上させました。
以上、重症血友病A患者に対して単にトロンビン形成を促進するのみの治療よりも、凝血塊を安定させる目的でpdFXIIIを併用することは、新しい治療戦略になる可能性があるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| 出血性疾患