2011年03月31日
慢性GVHDの治療:造血幹細胞移植入門(50)
造血幹細胞移植入門:慢性GVHD治療
一次治療
慢性GVHDの標準的な一次治療はステロイドです。プレドニゾロン換算0.5-1.0 mg/kgで開始することが多いですが、ステロイド量と有効性の関連は不明です。
ステロイドにCSPを加えても、慢性GVHD治療効果における上乗せ効果はありませんでしたが、骨頭壊死は減少しました。
Koc S, Leisenring W, Flowers ME, et al. Therapy for chronic graft-versus-host disease: a randomized trial comparing cyclosporine plus prednisone versus prednisone alone. Blood. 2002;100:48-51.
長期ステロイド投与の毒性を考慮しますと、ステロイドの必要量を減らす目的でのCI併用は妥当と思われます。なお、MMFによる一次治療の効果は否定的です。
Martin PJ, Storer BE, Rowley SD, et al. Evaluation of mycophenolate mofetil for initial treatment of chronic graft-versus-host disease. Blood. 2009.
二次治療
ステロイド抵抗性慢性GVHD(慢性GVHDに対する二次治療の適応)に、高用量ステロイドやCSPからTACへの変更・シロリムス(以下全て保険未承認)・ECP・ソラレン紫外線療法(PUVA)・サリドマイド・リツキシマブ・MMFなどが試みられてきましたが、急性GVHDと同様、標準的な二次治療はありません。
慢性GVHDに対する二次治療の適応(以下のいずれか)
・一次治療のプレドニゾロン1 mg/kgを2週間投与しても増悪
・4-8週間0.5 mg/kg以上のプレドニゾロンを継続しても改善しない
・症状再燃のためプレドニゾロンを0.5 mg/kg未満に減量できない
肺慢性GVHD
閉塞性細気管支炎(BO)などの肺慢性GVHDに、免疫抑制療法は通常無効です。
唯一の根治療法は肺移植ですが、社会的コンセンサスやドナーの問題もあり、適応は難しいです。
Sano Y, Date H, Nagahiro I, Aoe M, Shimizu N. Living-donor lobar lung transplantation for bronchiolitis obliterans after bone marrow transplantation. Ann Thorac Surg. 2005;79:1051-1052.
最近ECPの治療成績が報告され、肺慢性GVHD 6例(54%)に有効でした。6例中1例は完全寛解となり、呼吸器症状は消失、呼吸機能も改善し、免疫抑制療法も離脱しました。
Couriel DR, Hosing C, Saliba R, et al. Extracorporeal photochemotherapy for the treatment of steroid-resistant chronic GVHD. Blood. 2006;107:3074-3080.
実践的な報告として、吸入ステロイドが肺慢性GVHDの進展防止に有用との報告もあります。
Bashoura L, Gupta S, Jain A, et al. Inhaled corticosteroids stabilize constrictive bronchiolitis after hematopoietic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant. 2008;41:63-67.
局所・支持療法
慢性GVHDの治療は長期間に及び、感染症や臓器障害に対する予防策・治療も予後を左右します。
局所・支持療法は、造血細胞移植ガイドラインに詳述されています。
日本造血細胞移植学会. http://www.jshct.com/. 2010.
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【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14| 血液疾患(汎血球減少、移植他)