金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年05月04日

金沢大学第三内科「血栓止血研究グループ」紹介(1)

金沢大学医学部第三内科(血液・呼吸器内科)の研究室紹介シリーズを続けたいと思います。

今回も金沢大学第三内科同門会報を出典としています。原稿執筆時点から月日が経過していますので、現状とは既に異なっている部分もありますが、ご容赦いただければと思います。

最後は、「血栓止血研究室(血管診療グループ)」です。

 

 

血栓止血研究室(血管診療グループ)

血栓止血研究室は、血栓止血学を臨床・研究・教育のテーマとしています。全身臓器に分布する血管を対象としますので、多くの他領域と関連が深いのが特徴です。

血栓止血学は血液内科の領域の一つと思われがちですが、「血管内科」と言った方がよりわかりやすいかも知れません。


最近の臨床現場での話題の一つといたしまして、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)が、多くの臨床医に処方されることになったことをあげられます。

2008年5月から播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬として発売されて医療機関の一部で既に処方されていましたが、この度全例調査が終了して、全医療機関で使用可能になりました。

本薬はヘパリンと比較して出血の有害事象は少なく、しかも効果の上回る薬剤です。抗凝固作用のみならず、抗炎症効果も強力である点も注目されています。

炎症性サイトカインや死のメディエーターと言われているHMGB-1を抑制することが知られています。

近年、DICにおける凝固と炎症のクロストーク(病態の悪循環サイクルを形成)が話題になっていますが、本薬はこのクロストークを遮断する上でも期待されています。今後のDIC治療の主軸になると思われます。


深部静脈血栓症や肺塞栓
に関する臨床各科からのコンサルトも相変わらず多いです。

また、術後のDVT発症を予防する目的としてフォンダパリヌクス低分子ヘパリンであるエノキサパリンも、当院においても数多く処方がなされています。今後、血栓止血領域において「予防治療」的な考え方がますます浸透していくと思っています。


現代に生きる人間は出血には強力ですが、血栓症にはとてももろい生物です。

その理由は紙面の関係で省略しますが、全人類が血栓症に対抗する方法を考える必要があると思っています。

個人的には、全人類が疾患の有無とは関係なく、弾性ストッキングを装着したり、抗血栓療法治療薬をサプリ的に内服するような時代がくるような気がしています。

健康的な観点のみならず美容的にもすぐれたオシャレな弾性ストッキングが、いろんな所で売られるそして皆が装着する、いわゆる「全人類 弾スト時代」が到来するのではないでしょうか。



【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10| 血栓止血(血管診療)