2011年05月18日
造血幹細胞移植の夢と現実(8)移植後再発予防と今後の展望
造血幹細胞移植の夢と現実(7)NK細胞とGVL効果増強 より続く
(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。
造血幹細胞移植の夢と現実(8)
同種免疫に依存しない移植後再発の予防
これまで述べたように、GVHDに依存したGVL効果には限界があることから、最近ではGVHDは極力抑えることによってNK細胞によるGVL効果を高めることが重要と考えるようになりました。
その一つの試みとして、シクロスポリンの血中ピーク濃度をできるだけ高く保つことが非血縁者間移植後のGVHD予防にどの程度有効かを明らかにするための全国的な臨床試験を山崎君が中心となって行っています。
また、GVHDを起こすT細胞とは別に、特異的に白血病を攻撃する白血病関連抗原特異的T細胞を誘導するための基礎的検討を近藤君が精力的に行っています。
造血幹細胞移植の今後の展望
患者の高齢化や新規分子標的薬の登場によって、治療関連死亡を来さない患者に優しい移植方法が以前にも増して求められるようになっています。
一方、移植後再発やGVHDは依然として大きな壁として立ちはだかっています。
移植に携わる我々血液内科医はこの壁を乗り越えるためにもっと工夫を重ねる必要があります。
アカデミアの世界では、どの雑誌に論文を載せたかがしばしば人物評価の指標に使われています。
しかし、臨床家の研究では、自分のやった仕事がどの雑誌に載ったかではなく、その成果がどの程度臨床に活かされているかの方がむしろ重要です。
今後も若い人と一緒に、臨床の現場に反映できる研究成果を挙げていきたいと思っています。
(続く)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33| 血液内科