金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2011年05月17日

造血幹細胞移植の夢と現実(7)NK細胞とGVL効果増強


造血幹細胞移植の夢と現実(6)移植後再発白血病と再移植より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 

造血幹細胞移植の夢と現実(7)

NK細胞によるGVL効果の増強

臍帯血移植を行うと、造血幹細胞に加えてT細胞やNK細胞などの免疫担当細胞も同時に移植されます。

臍帯血中のT細胞は未成熟であるため、HLAの不適合があってもGVHDが起こりにくいのですが、NK細胞は未成熟であっても強いGVL効果を示すことが中国の留学生盧緒章君の研究で明らかになりました。

また、毒性の低い薬剤を投与することによって、NK細胞に対する白血病細胞の感受性を高められることも分かりました。


臍帯血移植後にはT細胞の回復は遅れますが、NK細胞は移植後早期から回復します。

このT細胞が回復する前に現れる移植後早期のNK細胞がGVL効果の発現に重要であるため、移植後のGVHD抑制にはNK細胞を傷害しない薬剤を用いる必要があります。

このため大畑欣也君が、GVHDの予防に用いられるいくつかの免疫抑制薬についてNK細胞に及ぼす影響を検討したところ、臍帯血ミニ移植後のGVHD予防に頻繁に用いられているミコフェノール酸モフェチル(MMF)が、NK細胞の増殖や働きを強く傷害することが分かりました。

したがって、NK細胞によるGVL効果を温存するためには、MMFを含まないGVHD予防レジメンを用いる必要があることが分かりました。


一方、NK細胞による抗腫瘍効果は、NKG2DというNK細胞を活性化させるレセプターの遺伝子多型によって決まることが分かっていました。

高見君、ニカラグアの留学生J.Luis Espinoza君らは、NK活性の高いNKG2D多型を持つ非血縁ドナーから移植を受けた白血病患者の生存率が、NK活性の低いNKG2D多型を持つ非血縁ドナーからの移植例に比べて有意に高いことを世界で初めて見出しました。

その他に、免疫調節を司るインターロイキン17遺伝子や、パーフォリン遺伝子などの多型も、非血縁ドナーからの移植成績に影響を及ぼすことを明らかにしています。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(8)移植後再発予防と今後の展望

 

【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

造血幹細胞移植入門(インデックス)

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22| 血液内科