血友病Aの血小板活性化:Pセレクチン発現量など
血友病は先天性の凝固因子欠損症ですので、凝固因子活性の方に目がいくのは当然ではありますが、今回紹介させていただく論文は、血友病Aで血小板活性化に注目した点が新鮮ではないかと思います。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓
「血友病Aにおける血小板活性化」
著者名:van Bladel ER, et al.
雑誌名:Haematologica 96: 888-895, 2011.
<論文の要旨>
血友病患者における出血傾向を分類する際に、血小板の要素は過小評価されています。
著者らは血小板活性化状態が、残存第VIII因子活性や年間第VIII因子使用量(重症血友病で)と関連しているかどうか評価しました。
対象は、血友病軽症〜中等症21例、重症13例、健常人21例です。
血小板活性化状態は、血小板上のPセレクチン発現量、可溶性血小板活性化マーカーを用いて検討しました。
その結果、重症血友病Aの活性化血小板の比率は15.9%と、軽症〜中等症血友病A 8.2%、健常人6.4%と比較して有意に高値でした。
軽症〜中等症の血友病Aおよび重症の血友病Aともに、血小板活性化マーカーである血中PF4、CXCL7、RANTESは健常人よりも高濃度でした(それぞれ、PF4 1.4, 1.8, 0.3 pg/106 Platelet、CXCL7 65.8, 48.2, 20.0 pg/106 Platelet、RANTES 12.8, 9.5, 4.5 pg/106 Platelet)。
重症血友病Aにおいては、P-セレクチンが高発現であると、FVIII製剤の使用量が低いことが明らかになりました。
以上、重症血友病Aの血小板は活性化準備状態にあり、このことは第VIII因子製剤の使用が少なくなることと関連しているものと考えられました。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26| 出血性疾患