金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月10日

HIV&HCV感染の血友病と生体肝移植

HIV&HCV同時感染の血友病患者において、生体肝移植の治療成績について論じた論文を紹介させていただきます。

 

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「HIV&HCV同時感染の血友病患者に対する生体肝移植

著者名:Tsukada K, et al.
雑誌名:Transplantation 91: 1261-1264, 2011.


<論文の要旨>

HIVに感染した日本人血友病患者のほとんどはHCVに同時感染していますが、そのような患者に生体肝移植(Living donor liver transplantation ; LDLT)を行った場合の生存率、周術期合併症、凝固能の回復具合についてはほとんど不明です。著者らはこの点の検討を行い報告しています。


HIV(+)の血友病患者6例において、HCV関連の進行肝硬変に対して肝移植が行われました。

移植時のCD4陽性T細胞の平均は、376±227/μlでした。


肝移植1、3、5年後の生存率は、それぞれ66、66、50%でした。

血友病と関連した周術期の致命的出血はみらませんでした。

2例では、生着不全のため移植6ヶ月以内に死亡しました。

6ヶ月生存した全例において、HIV感染は充分にコントロールされました。

2例(遺伝子型2a、2+3a)ではウイルスの反応を抑制することができましたが(経過観察の最終時点まで生存)、1例(遺伝子型(a+1b)ではHCV感染症が再燃して移植4年後に非代償性肝硬変のため死亡しました。


以上、HIV&HCV同時感染の血友病患者において生体肝移植( LDLT)は安全に行うことができるものと考えられました。

また、血友病は移植成功後に臨床的には治癒状態となりました。


術後にHCVがインターフェロン&リバビリン併用療法により充分にコントロールできた場合には、良好な予後が期待できるものと考えられました。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36| 出血性疾患