金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月12日

von Willebrand病(VWF代謝亢進例)に対するデスモプレシン

von Willebrand病の一部症例では、von Willebrand因子のクリアランス亢進がVWF活性低下の原因と考えられるようになりました。

このようなタイプのvon Willebrand病に対する止血治療を論じた論文を紹介させていただきます。

 

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「von Willebrand病(VWF代謝亢進例)に対する止血治療

著者名:Castaman G, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 105: 647-654, 2011.


<論文の要旨>

von Willebrand病(VWD)の一部の症例においては、von Willebrand病(VWF)のクリアランスが早まっていることがVWF活性低下の原因と考えられるようになりました。

これらの患者の出血頻度や治療法は明らかになっていません。


著者らは、VWFクリアランスが著明に亢進しているVWD60例(VWF遺伝子変異;R1205H<VWD-VI>)および23例(C1130F)を対象に検討を行いました。


71ヶ月間の観察期間中、VWD-VI65%、C1130F61%において治療が必要となりました。

治療が必要となった自然出血はC1130Fでは7.5/100人・年、R1205Hでは1.9/100人・年でした。

女性の方がより出血が多い結果でした(過多月経のため)。


生殖可能年齢のVWD-VIではわずかに3/15(20%)、C1130Fでは8/9(89%)において月経に対する治療(鉄剤、女性ホルモン製剤、トラネキサム酸)が必要でした。

ほぼ全ての抜歯、小手術、出産は、デスモプレシンで管理可能でした。

大手術ではVIII/ VWF製剤が必要でしたが、一部の症例ではデスモプレシンでも充分でした。


以上、VWD1型と同様に、VWFクリアランスが早くなるタイプのVWDにおいてもデスモプレシンは有効と考えられた。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54| 出血性疾患