金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月13日

血友病A患者の非中和抗体:第VIII因子活性を抑制しない

第VIII因子インヒビターと言えば、第VIII因子活性を抑制する抗体をすぐに想定しますが、第VIII因子活性を阻害しない抗体も知られています。

非中和抗体(non-neutralising antibodies:NNA)と言います。今回紹介させていただく論文はこの点を論じています。

 

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「血友病A患者における非中和抗体の出現率とその認識部位

著者名:Lebreton A, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 105: 954-961, 2011.


<論文の要旨>

血友病A患者における抗第VIII因子抗体の出現は、医原性合併症として大きな問題です。

この抗体にはインヒビターと非中和抗体(non-neutralising antibodies:NNA)があります。

インヒビターは第VIII因子活性を低下させるのに対して、NNAは非機能部位を認識しています。


著者らは、インヒビターを保有していない血友病A 210症例(仏人)におけるNNAの出現率を解析し、また抗体の認識部位を検討しました。


NNAは38/210例(18.1%)でみられましたが、出現率は血友病の重症度とは無関係でした。

NNAを有していた38症例のうち、73.7%の症例では重鎖を認識する抗第VIII因子抗体が存在し、13.2%は軽鎖を認識し、13.2%は両方を認識しました。


このように、血友病Aの重症度とは無関係に、NNAの認識部位は重鎖が優勢でした。
NNAのうちBドメインを認識したのは18.4%(7/38)でした。


多変量解析の結果、NNAの出現率は、遺伝子組換え第VIII因子製剤であるか血漿由来第VIII因子製剤であるか無関係でした(19.6% vs 14.9%;P=0.53)。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患