金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月31日

凝固と炎症のクロストーク2:血小板と血栓/ヒストン

 

凝固と炎症のクロストーク1:敗血症モデル より続く。

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン関連)ー インデックス ー

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今回紹介させていただく論文は、前回論文(Nat Med. 2009 Nov;15(11):1318-21)から続いて細胞外ヒストンの話題です。

細胞外ヒストンによるトロンビン(血栓)形成は、血小板の関与が大きい(血小板のTLR2 and 4)が関与しているという報告です。

 


Extracellular histones promote thrombin generation through platelet-dependent mechanisms: involvement of platelet TLR2 and 4.


Semeraro F, Ammollo CT, Morrissey JH, Dale GL, Friese P, Esmon NL, Esmon CT.

Blood. 2011 Jun 14. [Epub ahead of print]


壊死細胞からのヒストンの遊離は、細小血管における血栓形成と関連しています。ヒストンは血小板を活性化する作用があるため、血小板を介した機序である可能性があります。

著者らは、ヒストンのヒト多血小板血漿(platelet rich plasma: PRP)の向凝固活性に対する影響を検討しました。


その結果、ヒストンは、用量依存性にPRPのトロンビン形成能を亢進させました(calibrated automated thrombinographyで評価)。

この作用は、接触相のブロックの如何とは無関係でした。

凝固活性化は活性化血小板の存在を必要としましたが、血小板組織因子とは関係ありませんでした。

一方、フォスファターゼでポリリン酸塩(polyphosphate)を処理しますと、トロンビン形成量は低下しました(FXIIがブロックされたり非存在の条件であっても)。

実際、ヒストン存在下において、ポリリン酸塩はXII因子非依存性にトロンビン形成を誘導しました。

また、ヒストンは血小板凝集、P-セレクチン・フォスファチジールセリン・FV/Vaの発現、プロトロンビナーゼ活性の上昇をもたらしました。

モノクローナル抗体を用いて血小板のtoll-like receptors (TLRs) 2&4をブロックしますと、活性化血小板の比率が低下し、PRPにおけるトロンビン形成量が減弱しました。


以上、ヒストンで活性化された血小板は向凝固活性を有しトロンビン形成をきたすこと、そしてTLR2&4が重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
 
 
 
【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| DIC