凝固と炎症のクロストーク3:トロンボモジュリン/プロテインC
今回紹介させていただく論文は、細胞外ヒストンが、トロンボモジュリン(TM)/プロテインCシステムを障害することにより、トロンビン(血栓)形成をきたすという論文です(参考:敗血症と凝固・DIC/抗炎症効果)。
前回紹介させていただいた論文(血小板と血栓/ヒストン)では、ヒストンと血小板の関連が論じられていましたが、今回は血小板ではなく凝固との関連を論じています。
凝固と炎症のクロストーク(ヒストン関連)ー インデックス ー
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Extracellular histones increase plasma thrombin generation by impairing TM-dependent protein C activation.
Ammollo CT, Semeraro F, Xu J, Esmon NL, Esmon CT.
J Thromb Haemost. 2011 Jun 28. doi: 10.1111/j.1538-7836.2011.04422.x. [Epub ahead of print]
ヒストンは細胞外に遊離しますと、細胞障害や組織障害をきたす重要な蛋白です。
マウスに対してヒストンを投与しますと、広範囲にわたる細小血管内血栓をきたすために、ヒストンは向凝固活性を有していると考えられます。
プロテインC(PC)/トロンボモジュリン(TM)システムは、特に微小血管レベルにおいて凝固を制御する役割を果たしていますが、いくつかの荷電蛋白により影響を受けます。
著者らは、血漿トロンビン形成アッセイを用いて、ヒストンのPC/TMシステムへの影響を検討しました。
ヒストンのトロンビン形成への影響は、トロンボモジュリン(TM)の存在下および非存在下で評価されました(calibrated automated thrombinography)。
PCの活性化は、発色合成基質を用いて評価しました。TMおよびPCのヒストンへの結合は、solid-phase binding assayで評価しました。
TM存在下において、ヒストンは用量依存性にトロンビン形成量を増加させました(コンドロイチン硫酸成分とは無関係でした)。
この効果は、活性化PCの抑制のためではなく、TMによるPC活性化抑制のためでした。
ヒストンは、PC、TMの両者に結合しましたが、この作用のためにはPCのGlaドメインが必要でした。
ヒストンの中では、H4とH3が最も強力な作用を発揮しました。
興味あることに、ヘパリンとは異なり、DNAはヒストンのトロンビン形成に対する効果を阻害しませんでた。
以上、ヒストンはTM依存性のPC活性化を低下させて、トロンビン形成を増加させるものと考えられました。
この機序は、ヒストンにより微小血管内に血栓を形成して臓器障害や強い炎症をきたすことに寄与しているかも知れません。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42| DIC