金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年08月04日

国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)炭疽菌

国際血栓止血学会(ISTH)では、それに先立つ日程で学術標準化委員会(SSC)が、開催されています。

ほぼISTH内のプログラムと考えて良いと思います。

SSCシンポジウムの中で、DIC部会の内容を紹介させていただきます。ただし、すべての内容を書き写すことはできませんので、管理人が印象に残った部分のみの紹介となりますが、ご了解いただければと思います。

 

ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー

 

Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)

2011年7月24日(日)9:00-12:00

Educational Session(1)


DIC due to anthrax: A pre-clinical in vivo study

Kurosawaは、anthrax(炭疽)によるDICに関して報告しました。

Bacillus anthracis(B. anthracis、炭疽菌) は、炭疽を発症する芽胞形成桿菌(グラム陽性菌)です。全身性の感染症は、敗血症、toxemiaをきたし死亡率が高いです。

炭疽菌は土壌中の常在細菌ですが、家畜やヒトに感染して炭疽を発症させます。皮膚の傷口から侵入して皮膚で発症する皮膚炭疽、炭疽菌の芽胞が呼吸器を介して肺に到達する肺炭疽、炭疽により死亡した動物の肉を食べたとき、腸管の傷口から侵入して起きる腸炭疽が知られています。


炭疽菌は 3 種類の毒素タンパク質を菌体外に分泌しており、これが炭疽によって起こる諸症状の直接の原因になっています。

外毒素はそれぞれ、防御抗原 (PA, protective antigen)、浮腫因子 (EF, edema factor)、致死因子 (LF, lethal factor) と呼ばれています。これらをコードする遺伝子はすべて毒素プラスミド pXO1 上に存在しています。


Kurosawaは、ヒヒモデルを用いた検討を行いました。

ヒヒにB. anthracisを投与したところ、血管透過性亢進、DIC(血小板数の低下、フィブリノゲンの低下、APTTの延長、Dダイマーの上昇、プロテインCの低下)、全身性炎症反応が観察されました(Am J Pathol 169: 433-444, 2006)

また、胸水、肺胞浮腫、肺出血が観察されました。

Delta strainは、toxinのない菌種ですが、敗血症、DICを発症して、4日で全モデルが死亡しました(toxin非依存性の病態の存在を意味しています)。

しかし、活性化プロテインC(APC)を投与したところ、全モデルが生存しました(参考:敗血症と凝固・DIC/抗炎症効果/活性化プロテインC)。


<Anthraxに合併したDICは新しい話題であり、APC以外に、各種ヘパリン類、rTMなどその他の薬物による治療でどうなるか興味のあるところです>

 

【リンク】

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27| DIC