金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年08月05日

国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)敗血症

国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。

 

国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)炭疽菌 より続く。

ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー

 

Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)

2011年7月24日(日)9:00-12:00

Educational Session(2)


Pathogenesis of septic DIC

Leviは、敗血症に合併したDICの病態について報告しました。

現在、感度の高い分子マーカーを使用することにより、臨床検査異常を速やかにとらえ、DICの診断がなされています。

全身性の凝固活性化により、細小血管内に微小血栓が多発すると臓器障害をきたし、微小血栓の多発により血小板や凝固因子が低下すると出血症状をきたします。

敗血症においては、エンドトキシンやサイトカインが単核球に作用して、組織因子の発現が高まることで、凝固活性化をきたし、DICを発症します。


最近の話題として、血小板からのP-セレクチンは単核球からの組織因子産生を亢進させる、ADAMTS13活性はDICの重症度とともに低下するなどの報告が紹介されました。

ADAMTS13活性はDIC(炎症)経過とともに消費される可能性があります。ADAMTS13活性が低下したDIC症例では予後不良です。

活性化プロテインC、TFPI、アンチトロンビンは、抗凝固、抗炎症の両者からの作用が期待されている。


Glycocalyxは、プロテオグリカンなど血管内皮細胞表面を覆う、糖と結合した化合物の総称です。

炎症の刺激や高血糖は血管脆弱性をきたします。

近年、血管内皮に存在するglycocalyxと血栓止血病態との関連が指摘されています。

エンドトキシンによって誘導された炎症反応はglycocalyx層を薄くするか、この病態でTNFは重要な役割を演じているかどうか検討しました。

健常人男性に投与されたエンドトキシンは、細小血管のglycocalyx 層を著明に薄くし、それに伴いglycocalyxの構成成分であるhyaluronan の血中濃度を上昇させ、F1+2やDダイマーを上昇させました。

etanercept (TNFのレセプター製剤)によりTNFを抑制するとglycocalyxが薄くなるのを抑制しました。

炎症(少なくとも一部はTNF関与)はglycocalyxの障害を来すと考えられました(J Leukoc Biol 83: 536-545, 2008)。

 

【リンク】

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42| DIC