後天性von Willebrand病の治療
血液学の一流雑誌Bloodに連載されているHow I treat ?からの記事を紹介させていただきます。
今回は、後天性von Willebrand病です。von Willebrand病と言えば通常は先天性の疾患を指しますが、最近はむしろ後天性von Willebrand病の方が何かと話題かも知れません。
興味のある方は、是非原著に直接あたっていただければと思います。
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「後天性von Willebrand病(How I treat ?)」
著者名:Tiede A, et al.
雑誌名:Blood 117: 6777-6785, 2011.
<論文の要旨>
後天性von Willebrand症候群(AVWS)はしばしば見逃されたり、von Willebrand病と誤診される疾患です。
AVWSではvon Willebrand因子(VWF)の構造的、機能的欠陥がみられますが、自己免疫疾患、リンパまたは骨髄増殖性疾患、悪性疾患、心血管疾患、その他の疾患に伴うことが多いです。
AVWSにおけるVWF異常の原因としては、以下が知られています。
(1)抗VWF抗体によるVWFのクリアランス亢進または機能低下
(2)異形細胞や血小板表面へVWFの結合
(3)ずり応力の亢進によるVWFの分解、など。
AVWSを診断するにはいくつかの検査を行い総合的に判断するために、難しいことが多いです。
さらに、治療のためのエビデンスに基づいたガイドラインもありません。
AVWSの基礎疾患の治療(化学療法、放射線治療、手術、免疫抑制療法など)によりAVWSが寛解することがありますが、常にそれらの治療が可能で成功するとは限りません。
AVWSの発症機序は多様ですから、観血的処置などに際しての止血管理のためには、しばしば複数の治療手術が必要となります。
具体的には、デスモプレシン、VWF含有凝固因子製剤、免疫グロブリン、血漿交換、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)などから選択します。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57| 出血性疾患