金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年10月20日

造血幹細胞移植後合併症:トロンボモジュリン製剤(8)


DICの治療:トロンボモジュリン製剤(7)より続く。

 
造血幹細胞移植後合併症に対するrTM療法
造血幹細胞移植後に発症する血栓性微小血管症候群(thrombotic microangiopathy:TMA)や、類洞閉塞症候群(sinusoidal obstructive syndrome:SOS)は、凝固異常も伴い致死率の高い合併症です。

近年、造血幹細胞移植後のSOSや生着症候群(engraftment syndrome)症例にrTM(リコモジュリン)を投与し、凝固異常の改善や体重増加抑制効果を認めたとの報告があります。

Ikezoe, T. et al.: Bone Marrow Transplant., 45:783-785, 2010.

Ikezoe, T. et al.: Bone Marrow Transplant., 46:616-618, 2011.




造血幹細胞移植後は高サイトカイン状態にあります。

Nomura, S. et al.: Transplant. Immunol., 15:115-121, 2007.


そのため、内皮障害も顕著であるため、内皮細胞上のTM発現量が著減していることは容易に想像できます。

補充されたrTMによる抗凝固、抗炎症などの多面的効果が、SOSの進展あるいは予防効果を発揮するかどうかについては、今後の詳細な検討が必要と思われますが、大いに期待したい治療法です。
 



rTM製剤(リコモジュリン)のように、抗凝固作用のみでなく抗炎症作用を兼ね備えたDIC治療薬は今までになく、非常に画期的な薬剤といえます。

造血器悪性腫瘍に合併したDICに対して使用しても、出血の助長も認めずDIC離脱率も良好です。今後、造血幹細胞移植の合併症にrTMが有効であるかどうの検討がなされることを期待したいと思います。

参考:リコモジュリン

 
 

【リンク】

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13| DIC