DICの治療:トロンボモジュリン製剤(7)
TM製剤の臨床試験:トロンボモジュリン製剤(6) より続く。
DICの三大基礎疾患は重症感染症、造血器悪性腫瘍、固形癌ですが、絶対数は圧倒的に敗血症が多く、次に造血器悪性腫瘍が続きます。
一方、DIC発症頻度は造血器悪性腫瘍が高く、特に急性前骨髄球性白血病(APL)では約7割の症例がDICを合併します。
DICの発症機序や病態は、基礎疾患によって異なります。
敗血症性DICでは、高HMGB1血症ならびに高サイトカイン血症をきたし、血管内皮細胞上のTMの発現は抑制され、さらに内皮細胞傷害によって血中に遊離した可溶性TMは好中球エラスターゼによって分解されます(関連記事:敗血症性DIC)
したがって、rTMの循環血液中への補充は抗凝固・抗炎症効果を発揮し、臨床試験でも証明された様にrTMは敗血症DICの第一選択薬として期待できます。
一方、造血器悪性腫瘍のDIC発症機序は上記とは異なっています。
急性前骨髄球性白血病(APL)のように白血病細胞表面上のアネキシンIIの高発現により線溶系が過剰に亢進する機序や、化学療法により組織因子を大量に含んだ腫瘍細胞が崩壊し血中に流入し凝固が活性化される機序などが考えられています。
造血器腫瘍DICでは、特に治療が繰り返されている場合は、抗癌剤による内皮細胞傷害が引き起こされているため、TMの発現低下や切断などが予測され、rTM(リコモジュリン)の補充はDIC治療に有効であると考えられます。
また、rTMはその作用機序や臨床試験結果からも出血の助長が少ない薬剤です。造血器悪性腫瘍DIC症例に対しても使用しやすい薬剤と考えられます。
造血器悪性腫瘍DICに対するrTM療法の実際
rTMの投与方法は、半減期が20時間と長いため1日1回380U/kgを30分程度で点滴静注します。
ただし、腎排泄であるため重篤な腎機能障害例には130U/kgに減量する必要があり、また、投与時点で明らかな出血を認める場合は慎重投与とすべきです。
血中のPC濃度が10%以下に低下している患者では、rTMの薬効が減じる可能性がありますので、改善がみられない場合は他剤への変更を考慮します。
第III相臨床試験でPC濃度が10%以下の患者4例は、いずれもDICから非離脱でした。
参考:リコモジュリン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36| DIC