金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年11月18日

治療的診断:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群8

治療的診断(図):咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群7 より続く。

 

咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(8):治療的診断

治療前の評価によって、副鼻腔気管支症候群が湿性咳嗽の原因疾患であると一時的診断した場合、去痰薬(気道粘液修復薬)と14、15員環マクロライド薬による治療を開始し、遅くとも2か月後に治療効果の評価を行い、治療効果ありと判定すれば本疾患と臨床診断できます(治療的診断(図))。

さらに4か月治療を継続し、咳嗽が消失すれば確定診断となります。


乾性咳嗽の場合、本邦では大部分が咳喘息アトピー咳嗽ですので、この二つの疾患を念頭に「診断的治療」を開始します。

最初に、「気管支拡張薬が有効な咳嗽は咳喘息だけである」ことに基づき、1〜2週間の気管支拡張療法を実施して、その効果を判定します。


気管支拡張療法が第一段階である理由は、以下の通りです。

1)気管支拡張薬は咳喘息にしか効きません(特異的)
2)効果の発現が早いです(即効性)
3)咳喘息が最も多いです

咳嗽が消失しないまでも、明らかに軽減(初診時の咳嗽の強度と頻度を総合した患者の感覚を10 cmとして、7 cm以下に軽減)すれば咳喘息と診断し、より十分な治療(導入療法)を開始します。

気管支拡張薬が無効な場合には、アトピー咳嗽と一時的に診断し、ヒスタミンH1-拮抗薬およびステロイド薬を用いて治療します。

それぞれの治療によって咳嗽が完全に軽快すれば、それぞれの疾患の確定診断となります。

しかし、それぞれの治療によって咳嗽が完全に軽快しない場合には、胃食道逆流による咳嗽心因性・習慣性咳嗽など、他の原因の併発を想定し、検査・治療を進めることになります。

種々の原因疾患を想定して治療を行っても咳嗽が軽快しない場合や残存する場合には、中心型肺腫瘍気管・気管支結核気道内異物などが原因となることもあり、気管支鏡検査の絶対適応となります。

 

(続く)導入治療:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群9

 

【関連記事】  咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン

【リンク】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| 咳嗽ガイドライン