金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年11月19日

導入治療:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群9

治療的診断:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群8 より続く。

 

咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(9):導入治療

咳嗽の治療は、以下の3つから構成されます。

1)治療的診断を行うための診断的治療
2)咳嗽を軽快・消失させるための導入療法
3)維持療法(長期管理)



診断的治療
:既述です(治療的診断治療的診断【図】)。


導入療法


診断的治療によって原因疾患を一時的に診断した後に、咳嗽を軽快・消失させるために実施する治療です。

1)咳喘息

(1)軽症
塩酸クレンブテロール(商品名:スピロペント)(10 µg錠)4錠を分4で経口投与+硫酸サルブタモール(商品名:サルタノール)(100 µg/puff)2吸入を咳嗽時および咳嗽前屯用。

(2)中等症
塩酸クレンブテロール(10 µg錠)4錠を分4で経口投与+硫酸サルブタモール(100 µg/puff)2吸入を咳嗽時および咳嗽前屯用+プロピオン酸フルチカゾン(商品名:フルナーゼ)1回200 µgを1日2〜4回吸入+カルボシステイン(商品名:ムコダイン)(500 mg錠)3錠を分3で経口投与。

(3)重症
上記の中等症の治療にプレドニゾロン(商品名:プレドニン 5 mg錠)4錠を朝1回、短期(1〜3週間)経口投与を追加。

いずれの重症度においても、ロイコトリエン拮抗薬が有効性を示す症例があり、さらにロイコトリエン拮抗薬は咳喘息に特異的に有効である可能性を示唆する基礎的および臨床的成績も蓄積されつつあります。

Nishitsuji M, et al: Effect of montelukast in a guinea pig model of cough variant asthma. Pulm Pharmacol Ther 21:142-145, 2008.

Kita T, et al: Antitussive effects of the leukotriene receptor antagonist montelukast in patients with cough variant asthma and atopic cough. Allergol Int. 59: 185-192, 2010




2)アトピー咳嗽


(1)軽症

塩酸アゼラスチン(商品名:アゼプチン)(1 mg錠)4錠を分2で経口投与+カルボシステイン(500 mg錠)3錠を分3で経口投与。

カルボシステインには好酸球性気道炎症に伴う咳感受性亢進を抑制する作用を有することが基礎研究で示されています。

Katayama N, et al: Effect of carbocysteine on the antigen-induced increases in cough sensitivity and bronchial responsiveness in guinea-pigs. J Pharmacol Exp Ther 297: 975-980, 2001

(2)中等症
塩酸アゼラスチン(1 mg錠)4錠を分2で経口投与+プロピオン酸フルチカゾン 1回200 µgを1日2〜4回吸入+カルボシステイン(500 mg錠)3錠を分3で経口投与。

(3)重症
上記の中等症の治療+プレドニゾロン(プレドニンR5 mg錠)4錠を朝1回、短期(1〜3週間)経口投与。



3)副鼻腔気管支症候群


診断的治療(例えば、カルボシステイン1500 mg/日+クラリスロマイシン100 mg/日)をそのまま継続します。

 

(続く)維持療法:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群10 へ

 
【関連記事】  咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン

【リンク】
金沢大学 血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28| 咳嗽ガイドライン