2011年12月11日
2010年米国血液学会報告(1):金沢大学血液内科
「2010年米国血液学会に参加して(1)」 by 細川晃平(平成21年入局)
第3内科では2年間、病棟フリーとなり研究を中心とした生活があります。
私は平成21年度に大学院入学の後、平成22年度より2年間の研究生活を開始させて頂いておりますが、その1年目に米国血液学会に参加させて頂く機会を頂きましたので、御報告させて頂きます。
2010年12月4日から12月7日の4日間、第52回米国血液学会(ASH)がフロリダ州オーランドにて開催されました。ASHはアメリカの学会ではありますが、世界最大の血液学会として知られており、教科書やレビューなどで名前を連ねる著名な先生方が教育講演を行い、最先端の発表が行われる世界的な集まりです。総演題数は4000ほど、参加者は数万人に達する学会で、今回の会場は全米で2番目に大きいコンベンションセンターという事でした。会場から次の会場まで歩いて10〜15分かかることもあり予定通り発表を聞けない事もありました。
第3内科からは、中尾教授・大竹教授を始め総勢9名が参加致しました。採択率はおおよそ6割程度との事ですが、当教室からは7題が採択され、金沢大学の存在感を示す事ができたように思います。今回はそのうち4題が口演発表に採択されました。採択率10-20%と言われる口演発表に金沢大学の演題が4題も採択され、金沢大学第3内科の一員として非常に誇らしく感じました。
高見昭良先生は、博士研究員のLuis Espinoza先生とともに、NKG2DやGranzymeなどの遺伝子多型が非血縁者間同種移植の成績に及ぼす影響を明らかにし、大きな注目を集めました。
博士研究員の片桐孝和先生は再生不良性貧血患者にみられる6番染色体短腕のLOH(6pLOH)を世界で初めて報告し、骨髄不全研究に新たなブレイクスルーを見出しました。
保健学科の森下英理子先生はサイトカインで誘導されるTFやPAI-1の血管内皮細胞における発現に及ぼすクルクミンの影響を報告され、ASHの最終口演発表を終えられました。
私自身は初めての国際学会の参加でしたが、とにかく世界の血液内科学・血液内科診療は現在どのような事に着目し、どのような方向に進んでいるのかという観点で見聞を広めつつ、また現在私自身が中尾教授の指導の下で行わせて頂いている研究に関連した発表は可能な限り聞いて、演者に少なくとも一つは質問しようという意気込みで臨みました。
ASHの教育講演はまさにその世界の第一人者が話をしますので、非常に分かりやすいレビューと最先端の研究成果が提示され、非常に勉強になりました。
臨床研究領域ではレナリドマイドなどの新規薬剤の臨床試験の結果報告などが多かったようですが、NK細胞療法による白血病治療やMSC(Mesenchymal stem cell)を利用した細胞治療など、日本ではあまり聞く機会のない話を聞く事ができました。
基礎研究領域ではLeukemia (myeloma) stem cellなどの幹細胞をターゲットとしたこれまでにない治療戦略の話や、ゲノムワイド関連解析(GWAS)などのゲノム網羅的解析に関する発表が多い印象を受けました。
骨髄不全研究の領域では、演者をつかまえて質問をいくつかする事ができ、自分の行っている研究に参考になる情報を得る事ができたのは、大変有益であったと思います。
(続く)2010年米国血液学会報告(ASH 2):金沢大学血液内科 へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 血液内科