2011年12月31日
心臓弁膜症と後天性von Willebrand症候群
後天性von Willebrand症候群は、後天性血友病とならんで、最近何かと注目される疾患です。
今回紹介させていただく論文では、人工僧帽弁不全に後天性von Willebrand症候群を合併する点の検討がなされています。
「人工僧帽弁不全における後天性von Willebrand症候群」
著者名:Perez-Rodriguez A, et al.
雑誌名:Eur J Haematol 87: 448-456, 2011.
<論文の要旨>
重症の大動脈弁狭窄症患者のうち15〜25%で出血症状がみられますが、後天性von Willebrand症候群(AVWS)のためと考えられています。ただし、これまで人工僧帽弁(MV)不全においてAVWSを合併する報告はありませんでした。
著者らは、人工MV(不全あり)に対して適切な抗凝固療法の行われていた5症例で出血がみられた症例を経験しています。
全員入院加療が必要となり、2例では輸血が行われました。不全を伴っていない人工弁の2例をコントロールとしました。
術前に抗凝固薬(参考:PT-INR)を中止しましたが、APTTの延長が持続していました。
血小板機能解析では、4例ではclosure time(CT)が延長していました。
第VIII因子活性(FVIII:C)、VWFリストセチンコファクター活性(VWF:RCo)、VWFコラーゲン結合能(VWF:CB)の上昇がみられましたが、VWF抗原(VWF:Ag)が最も上昇していました。
VWFの large multimerの欠損とともに、VWF:RCo/VWF:Ag比やVWF:CB/VWF:Ag比の低下がみられました。術後には、全パラメーターは著増し、上記の比、CT、VWFマルチマー構造は正常化しました。
人工MV不全患者においてもAVWSを合併していることがあり、このことは出血と関連しているものと考えられました。
人工MV不全患者において抗凝固療法が理由として考えられない出血に遭遇した場合には、AVWSも考慮すべきと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17| 出血性疾患